麻帆良な日常
□ACT.4
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フラフラと教室に帰り、机に倒れ込む。
畜生、オレだけハワイ行きが消えるとかいじめじゃねーか。
「どうした飛鳥。珍しく落ち込んで」
「龍……」
モデルガンの整備をしながら金髪巨男、龍が声をかけてきた。どーでもいいが、モデルガンが本物にしか見えない。
「オレだけハワイ行き中止なんだってよ」
「任務か?」
「うん」
龍は『裏の世界』、つまり魔法やら陰陽術なんかの世界に通じている。もっとも、魔法は使えないらしいけど。
「飛鳥も大変ですねー」
いつの間に現れたのか、夕詠がオレの前で言った。
「そう思うなら一緒に来てくれよ」
「嫌ですよめんどくさい」
「このか嬢と同じ班らしいから、夕映ちゃんも危ないことに巻き込まれるかも……「行きましょう!!」
さすがシスコン、妹のためなら何でもするんだな。
「あれ、飛鳥たち何してるの?」
ちょうどその時教室に時雨が入って来た。また深夜までゲームでもしてたのか、目の下に大きなクマがある。
「あ、時雨。オレと夕詠修学旅行行かねーから」
「は? 何でそうなるんだ?」
「それは……」
時雨は魔法関係者じゃない。言い訳するにもいいのが思いつかないし、変な言い訳なら見破られそうだ。時雨は勘がいいから。
それなら、本当のことを話すべきだろう。
「時雨、よく聞いて欲しい。今から話すことは、全部嘘じゃねーから」
「? わかった」
そしてオレは話した。魔法のこと、陰陽術のこと。とにかく『裏の世界』に通じること全部。
「……信じがたい話だな」
「やっぱり、信じられないか……」
魔法なんて馬鹿げたもの、普通は信じないよな。時雨もそうか……。残念だ。
「誰も信じないとは言ってないよ」
「へ?」
「飛鳥は嘘じゃない、って言った。だからボクは飛鳥の話を本当のこととして受け止める。ま、実際に魔法を見たことはないから、あくまで話としてしか認識してないけど」
驚いた。まさか本当に信じてくれるとは……。
「ははっ、さすがは時雨だよ。オレの親友なだけはある」
「そりゃどーも。出来れば実物を見せてくれると嬉しいんだけど」
笑みを浮かべるオレに、同じく笑って返す時雨。オレは魔法を見せるべく手をゆっくり持ち上げた。