麻帆良な日常
□ACT.3
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「何しているのかは、見ればわかるだろう?」
「まぁ、血を飲んでるな。とは……」
「そういうことだ」
僕と会話しながらも目的である血液採取をやめようとしない師匠。こういうところを見ると、やはり吸血鬼という感じがする。……見た目は10歳児だけど。
「さて……」
「満足したんですか?」
「いや、まだ足りん」
さくらっちの血を吸うのはやめたけど、師匠はまだ満月していない様子。
「一人から飲みすぎるといかんしな。また明日誰かから血を分けて貰うことにするよ」
「そうですか。それじゃあ僕はさくらっちの記憶を書きかえて部屋まで送ってきますね」
とりあえず師匠(吸血鬼)を見たことと血を吸われたことは消しておこう。調査したけど何もなかったから部屋に帰って寝た。って設定でいいかな。
「それでは。おやすみなさい、師匠。気をつけて帰ってくださいね」
「待て」
「はい?」
さくらっちを連れて帰ろうとしたら師匠に呼び止められた。
「私に敬語を使うな。何回言ったらわかるんだ」
「はぁ……。ですが師匠「使うなと言ったら使うな! 師匠命令だ」……はい。じゃなくて、うん」
師匠は僕が敬語を使うと怒る。何故なのかはわからない。前に一度理由を聞いたら「虫酸が走るからだ」と言われた。
「……まだ、思い出さんのだな」
「はい? 何か言いました?」
「別に。それより敬語を使うな!」
「あ、つい癖で……。ゴメンね師匠。今度から気をつけるよ、じゃあ」
師匠と別れ、魔法で姿を消してから女子寮に向かう。さくらっちを部屋に寝かせてから寮を出て帰路に着いた。
――……まだ、思い出さんのだな――
師匠の言葉が頭をよぎった。
師匠は時々こういう言葉を僕に言う。僕には何のことなのかわからないけど、こういう言葉を聞く度に、何か大切なことを忘れているような気がしてくる。
「(僕は、何を忘れているんだろう)」
師匠は教えてくれない。僕は何を忘れているのかわからないし、何かを思い出すこともない。
いつか、わかる日がくるのだろうか?