麻帆良な日常
□ACT.8
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シネマ村で刹那とこのかが着替えてくるのを待って、夕詠も連れて本山へ向かった。そこまではいい、だが……。
この状況は何だ!?
「おい刹那。何で朝倉たちが追いかけて来てんだよ」
「それが……荷物にGPSを忍ばせられていたらしく……」
マジかよ! うー、これ以上正体バラすワケにはいかねーし。先行くか。
「オレ、クロと一緒に先行くわ」
「えっ! シロさん!?」
言うがはやいか、オレは夕詠を連れて駆け出した。
本山に着いて、迎えてくれた使用人に挨拶しながら奥へ向かう。
「来たかい、飛鳥」
「おう。来てやったぜ」
「はは……」
にこやかに笑って現れた詠春。かと思えば突然後ろに回られて……。
「ぐぇふっ!?」
思い切り床に叩きつけられた。
「だ、大丈夫ですか?」
「な、何とかな……」
夕詠が心配そうに声を掛けてくれる。
くそう、詠春め。これだから京都には来たくなかったんだ。
「無断で力を使ったな。飛鳥」
「う……っ」
「昔から言ってるだろう? お前の力はこちらの世界で使ってはいけないと」
「で、でも詠春」
「言い訳は無しだ」
淡々と冷たく言う詠春。確かに勝手に使ったのは悪かったけど、いきなり叩きつけるのはないだろ……。
「ところで飛鳥、お前の後ろにいる方は?」
詠春が夕詠に視線を向ける。
「あー、コイツは……」
「いいよ、飛鳥。挨拶くらい自分でする」
夕詠は前へ進み出ると、サングラスを外し、フードも取った。そして言う。
「はじめまして、近衛詠春さん。飛鳥の友人で、綾瀬夕詠と言います。今だけはクロとお呼びください」
詠春が驚いたように目を見開いた。何故か夕詠の顔をまじまじと眺める。
「君は……いや、そんなことある訳ないか。失礼しました、クロ君」
何だ? 詠春の様子がおかしい……。
「長、ネギ先生とお嬢様がお着きになられました!」
使用人の一人が詠春を呼びに来た。
「後で話を聞かせてもらう。ここで待っていなさい」
「わかったよ」