麻帆良な日常
□ACT.2.5
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春休み。まだ肌寒い感じのする朝にオレは目を覚ました。上半身を起こして辺りを見回し、あることに気づく。
――ここ、オレの家じゃねぇ。
昨晩の記憶を探ってみる。確か昨日は超包子で呑んで……。
「あ、その帰りに誰か連れてここに寄ったんだっけ」
思い出したはいいが、一緒に来た女の姿は見えず、シャワーの音もしない。
ふと指先に何かが当たる感触がし、何かを拾いあげる。
……紙?
「『楽しかったよ。あ、お金払ってね』って、逃げやがったのかよ……」
少々怒りを覚えたが、そこは気にしないことにしてシャワーを浴びる。服を着替えてからチェックアウトを済ませ、ホテルを後にした。
「飛鳥さん!」
「ん?」
コンビニで朝飯にお握り等を買い、家に向かって歩いていたら後ろから声をかけられた。
「よう、刹那。どうかしたか?」
「どうかしたじゃありません。部活に出てください!」
「えー」
「前に『春休みは部活につきあってやる』って言ってたじゃないですか」
オレ、そんなこと言ったっけ?
なんて言ったら刹那が怖いから言わない。仕方ない、部活出てやるか……。
――刹那SIDE――
「胴着とか取ってくるから待ってろ」
そう言って飛鳥さんは自宅の中に入って行った。残された私は、壁に寄りかかり、飛鳥さんが出てくるのを待つ。
さっき、飛鳥さんといる時、何か香水のような匂いがした。飛鳥さん自身は香水を使わないから、おそらく他の人から移ったのだろう。でも……。
匂いが移るということは、近くにいたと言うこと。まさか、また女遊びでも……。
「刹那、準備できたぞ」
「あ……」
考え事をしている間に飛鳥さんが準備を終わらせて外へ出てきた。ついまじまじと顔を見つめてしまう。
「ん? オレの顔に何かついてるか?」
「い、いえっ。は、早く行きましょう」
慌てて顔を逸らし、早足で歩き出す。なんとなく顔が熱い気がするが、差してきた陽の光りのせいにして剣道場まで急いだ。