麻帆良な日常
□ACT.3
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えーっと、こんにちは。今回は飛鳥に代わって僕、綾瀬夕詠メインで話を進めていきたいと思います。
春休みが終わりに近づいた頃、僕が所属する報道部にある情報が届いた。結構前から噂になっていた『桜通りの吸血鬼』についての情報だ。
「吸血鬼ってホントにいるのかねぇ……。夕詠先輩はどう思う?」
僕に話しかけてきたのは朝倉和美さん。夕映と同じクラスの人で、報道部の後輩だ。通称『麻帆良のパパラッチ』
「そうですね……。僕はいると思いますよ」
「へー、何で?」
「なんとなく、です。さくらっちはどうなんですか?」
本当は吸血鬼に会ったことがある。というかさくらっちも知ってるんだけど、言っても信じないだろうから内緒にして置こう。
……ちなみに、『さくらっち』というのは『朝倉』と『パパラッチ』を混ぜた感じのあだ名だ。僕は彼女をこう呼んでいる。
「んー、いるんじゃないかな? というかいて欲しいね。私がジャーナリストとして売れるために!」
「あはは……。さくらっちらしいですね」
と、二人で話していたら部長から呼び出しがかかった。僕らが『桜通りの吸血鬼』について調べるらしい。
「じゃあ八時に桜通りでいい?」
「わかりました」
さくらっちと約束してからとりあえず時間まで解散。まだ夕方にもなっていないし、しばらくどこかで時間を潰そう。
「桜通りの吸血鬼、か……」
心当たりがあるから行きたくないなぁ……。
夜八時。約束の時間通りにさくらっちは来た。
「さて、ホントに現れるのかな。吸血鬼」
カメラを持ったさくらっちが辺りを見渡しながら言う。今日は満月の三日前、吸血鬼が現れてもおかしくはない。
――ゾクッ……。
背中に視線を感じ、急いで振り向く。
「先輩どうかした?」
「……いや、何でもないです。急にすみません」
「そう?」
気のせい、かな? いや、でも……。
トントンとさくらっちに肩を叩かれた。
「どうしました?」
「あ、あれ……」
さくらっちの指差す方向には街灯。そしてその上に黒い影。
「四番朝倉和美……か。悪いがその血を分けて貰うよ」
影が街灯から飛び降り、勢いよく迫ってくる。さくらっちはデジカメで写真を取ろうとしたけど、影が触れた途端気を失って倒れてしまった。カメラが音を立てて地面に落ちる。
カメラを拾って今撮られた写真を消去し、影を睨む。影の正体は、さくらっちの同級生『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』
かつて『不死の魔法使い』『闇の福音』て言われ、人々(魔法関係者)に恐れられた、真相の吸血鬼。そして……。
「ったく。何やってんですか、師匠(マスター)」
僕の魔法の師匠でもある。