She falls in love!

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「大会お疲れ様。それと、おめでとうっ!」
満面の笑みを浮かべた風子に真田は、ぐっと息が詰まりそうになった。

反応出来ずにいる真田の代わりに、幸村がありがとうと礼を言った。

「ていうか、三人だったんだねぇ」
へらりと笑った風子に柳は、すまないと顔を歪めた。


「全然!ていうかね、お昼はお素麺なんだけど良いかな?」

気にしなくていいよ、と幸村が棒立ちの真田を叩いた。





「お母さーん、皆、来たよ」

風子が母親を呼ぶと、あらあらと楽しそうに足早にきた。

各々が名乗る間に、祥子と乃里子も顔を覗かせた。玄関を入って左手にある風子の部屋では、やり取りが丸分かりなのだ。




「お昼には早いかしら?」
濡れた手を拭った母親は、先頭に立つ幸村に尋ねた。


「いつでも食べられますよ」
幸村の笑顔に母親は、可愛らしいわねぇとばしばし肩を叩いた。

やっぱり、風子ちゃんのお母さんだな
幸村は、確信した。






リビングにあるローテーブルと風子の部屋にある小さなテーブルを持ち寄り、ぐるりと円になった。囲むのは、山となった素麺だ。

「お中元が沢山、残ってるのよ。良かったら、炒めるから言ってね」


「真田、邪魔しないでよね!それ、俺の素麺だから!赤いの俺のっ」

「ならば、緑は俺が貰おう」

「幸村、赤いの頂戴よ」
「優しいー、俺」
「はいはい」


「たるんどるっ!」




賑やかだなぁ…
風子は、どんどんとなくなる素麺を目の前に箸が止まった。

「風子は食べんのか?」

斜め前に座る真田が、不思議そうに聞いた。

「食べてるよ」
戦意喪失が大きいけどね、と付け加えた。


「すまない」

「皆とこういうことするの楽しいから、全然っ!」

二人のやり取りを見ていた柳は、微笑ましいなと思った。



「お粗末様、良かったら此処でやったら。風子の部屋は扇風機しかないし。クーラー入れてるし」

食器を母親と下げ、リビングに戻ると満足そうにお腹をさする幸村を乃里子が殴っていた。

代わりに持ってきた麦茶を風子が配っていると、母親はコソリと風子に囁いた、私は柳くんがタイプだわと。


「えっ…」
冷えた麦茶から水滴が垂れた。


どうした、と麦茶を受け取る柳に何でもないとだけ言った。





宿題を始めると3つの組が出来た。
1つは、宿題を終えた組だ。柳、まさかの乃里子だった。乃里子は、先程までに終えたらしい。

2つ目は、少しだけ残っている組だ。風子もここに属した。数学と理科のワークを摘んだ。真田は、ペラペラと国語のプリントを見ている。

3つ目は、ほぼやっていない組だ。祥子と幸村だ。

「幸村くん、英語しかやってないの?」
くりくりと髪を弄る幸村、風子は驚いた。

「やりたくないや」

ぶつぶつ文句を言う幸村の英語の問題集を見ると、隅にパラパラマンガが描かれていた。


「これ」
「仁王に書いてもらったんだ。凄いでしょ!画力は俺の方があるけどね」

パシンと良い音がした。
風子の目の前には、幸村が頭を押さえていた。音に反して、なかなかの力だったらしい。

「精市、逃がさない」

風子は力にも驚いたが、柳の変貌の方が優った。


終始、幸村と祥子を叱る様子が見られたがそれなりに宿題は進んだ。






(真田は風子のどこが好き?)(なっ!たるんどるっ)(ダメだよ、さっちゃん)(精市、さっちゃんと呼んでいるのか)(私もびっくりだわ)(弦一郎?)(固まってる)(世話が焼けるなぁ)


宿題




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