She falls in love!

□33
1ページ/1ページ


準決勝の相手は大阪か
何処だろうと、真っ向勝負だ!

真田は、張り出されたトーナメント表を前に意気込んだ。

隣で柳は、ノート片手に携帯を弄っている。


「蓮二、すまないな」

「いや、こういうことは嫌いじゃないさ」

柳は顔を上げ、ノートと携帯を閉じた。

真田は、柳に風子への試合の結果報告を頼んでいた。
自分で送ることが気恥ずかしく躊躇われていた時、それに気付いた柳が、やろうと申し出てくれたのだ。




気合いを入れてかからねばならんっ!

柳はトーナメント表を睨みつける真田に、携帯を差し出した。白色の携帯を、真田は見つめた。

「一言くらいどうだ」

「そうだな」


柳に頼んでも良いと思った真田だったが、やはり自分の言葉は自分でと思い、慣れない柳の携帯を操作した。



「珍しいな、真田が携帯を弄るなんてよ」

叩かれた肩に振り向くと、三年レギュラーの日向が錦といた。


「もう終わりました。蓮二、ありがとう」

あぁ、と頷き柳はメールを送信した。送信完了が確認出来ると、携帯をポケットにしまう。



「次のオーダー発表するぞ。S3が西島、D2は真田と柳。S2は日向だ。そして、D1は俺と小塚。で、S1が幸村」

錦はオーダーを読み上げると、いいかお前ら、とレギュラーを見回した。


「王者立海、負ける訳にはいかねぇ!一度じゃねぇ、連覇してこそ王者だ!」

錦は少し表情を緩め、テニスバッグを担いだ。

「会場に行くぞ」



試合会場の緊張した空気が、真田の気持ちを高ぶらせた。それは、幸村や柳も同じだ。

「お前らは来年の為にも、存分に勝ちを掴んでこい。分かったな!」

「はい」
幸村の柔らかな返事に、錦は大丈夫そうだなと幾分か低い位置にある頭を撫でた。


「立海、行くぞっ」

「イエッサー!!」





西島は確実に相手の苦手な場所を突き、ポイントを決めていく。普段のふんわりとした空気を微塵も感じさせない。日向は、相変わらずだなと錦と顔を見合わせた。

「ゲームセット、ウォンバイ西島規尋6ー2」

よっしゃ、と拳を合わせる先輩に礼をして、真田と柳はコートに立った。





「微温いわーっ!」

パワーを全面に出しながらも、ライン上を狙う真田。柳は真田のサポートに周り、確実に相手のデータを利用した。


「真田が動けるのは、柳のお陰ですね」
幸村は、隣に立つ小塚に話し掛けた。

「真田の真っ向勝負は見ていて気持ちが良いな」
小塚の向こうにいる西島が、嬉しそうにコートを走り回る後輩を見下ろす。


だけど、勝利を得るためにはそれさえも捨てなくちゃならない

小塚はそんな幸村の思いに気付いたのか、眼鏡を押し上げ、お前らなら大丈夫だよと、背中を叩いた。

「痛いですよ」
「そうか」
普段、あまり笑わない小塚がハハッと笑った。幸村は、勝つ、そう誓った。



「ゲームセット、ウォンバイ真田・柳ペア6ー2」


末恐ろしい、と苦笑した西島に幸村は先輩たちと練習しましたからと笑った。


蓮二はダブルス向きだな

真田は、隣に並ぶ友人に感謝した。蓮二がいたから、自由に動けたのだと。



「弦一郎、始まるぞ」



コートには、日向が立っていた。
日向は170cm無く、立海でも小柄な方だ。

対する相手は背が高く、日向の華奢さがより目立った。



蓮二くらいだろうか

「相手は、178だ」
柳は真田が尋ねる前に、告げた。




技巧派である日向は、パワープレイに押されていた。
四天宝寺も此処で踏ん張らねば、と攻めて攻めていた。



「日向、振り回せよ」
コートチェンジの時、錦が叫んだ。

「おいーす」
真田は、ラケットを掲げた日向の背中が広く感じた。


伊達に立海のレギュラーではない。貪欲に勝利を掴む姿に、普段食べてばかりいる日向はいなかった。


これで勝ち、決勝だ
真田は、電光掲示板を何とはなしに見た。

「白石?」

「白石は二年にして部長だ」
柳は、包帯をしている男だと教えた。
怪訝な表情をした真田だったが、それはすぐに消えた。丸井が身を乗り出そうとしていたからだ。

「日向先ぱーい!勝ったら、限定チョコ献上します、ジャッカルが」

丸井は日向と同じくボレーヤーだ。そして、日向からよく菓子を奪われている。一緒にいることも多く、日向の勝利をより望んでいる。

ジャッカルは、そんな丸井のパートナーとして、身を乗り出す丸井を制した。

「日向先輩は勝つに決まってんだろ、ブン太」
「当たり前だろぃ」



徐々に追い上げを見せた日向は、最後のボレーを鮮やかに決めた。

「ゲームセット、ウォンバイ日向龍7ー5」


試合を終えた日向は、汗を裾で拭くと、幸村に悪かったなと言った。




立海の前に、四天宝寺は敗退した。



「さあて、決勝だ!」


錦の拳が掲げられた。





四天宝寺、倒す
駆け上がる、王座へ






<<

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ