She falls in love!

□Case of Seiichi
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幸村精市の場合−



正直、驚いた
あの、真田に彼女なんてさ

仁王は最近、別れたらしいけど

別に構わないよ
テニスに影響出すようなやつじゃないし


「あげる」

「魚を食べんと、大きくならんぞ」


親子じゃないんだから…

俺もだけど多分、柳も一緒の考えじゃないかな


「おーい、幸村!さっき担任が探してたぜ」

あ、忘れてた…

「栗坊、悪いけどよろしくね」


弁当箱を栗坊に預けて、職員室に。




「頼んだよ」
「分かりました」

美化委員の仕事か…


頼まれたのは、他のクラスの美化委員にお知らせをすること。
どうせだから、戻りがてら渡しに行こう。



「はい、よろしくね」

「あぁ。つかさ、あの真田が付き合ってんのって本当?」

むしろ俺からしたら君みたいな厳つい人が美化委員、ていうのが気になるよ

好きな花が一緒だから、良いやつなんだろうけどね


「皆に聞かれる。風子ちゃん、面白いよ」

「は!風子さんなのか?付き合ってんの!そうか…そうなのか」

知り合いなの、と聞けば去年のクラスが一緒だとか。
それなら、倉敷もか
顔が広いんだなぁ…


「ま、それよろしくね」

唸る彼にはまた聞こう






「幸村くん!これ忘れてったよ!」

風子ちゃんの手にあるのは、俺の弁当箱の巾着袋。

どうやったら、巾着袋を忘れるんだろう
栗坊って馬鹿?


「真田の言葉を借りるなら、たるんどるだね」

クスクスと止まらない笑いに風子ちゃんは、ぱしりと腕を引っ張たいた。

風子ちゃんは、わりとスキンシップが激しいと思う。

初めてやられた時は、驚いた。柳はデータ通りだとか言ってたけど。

騒がしい廊下の様子からすると、もうすぐチャイムが鳴る。


「ねぇ、風子ちゃんは誰が一番好き?」

凄く意地悪な質問をしてみた。
困るんだろうな


「皆と一緒にいる時の皆が一番だよ、ふふっ」

してやったり顔で比べられないと笑う彼女は、中学生らしかった。

クラスに少数いるお化粧を念入りにする彼女たちとは、違う。

あと、女子は俺を「聖人君子」だと思ってるのか知らないけど、俺だって汗をかく。
それなのに、幸村くんは汗をかく訳ないでしょってどういう意味なんだか。

風子ちゃんは多分、そうやって見てないから楽だ。
そうじゃなけりゃ、意外な馬鹿力を発揮しないと思うし。


「俺って、王子様に見える?」

「えー、難しいよね。テニスの時は熱血王子だけど、皆といる時は結構口が滑るよね。栗坊の反応が面白いし。だから…庶民の王子様?」

多少の理解し難い部分はスルーしよう。
どういう訳だか、風子ちゃんは俺を楽にしてくれるらしい。

別に普段、猫を被ってる訳じゃないよ

ただ皆が、俺にフィルターをかけてるだけ。風子ちゃんがフィルターをかけてなくて、意識をしてなくてさ。


「チャイム鳴るね。これ、ありがとう」

この紺色の巾着袋はお気に入りだ。風子ちゃんには、感謝。栗坊には、何をしようかな。


「部活、怪我しないようにね」

「あぁ」




パタパタと走り去る風子ちゃんは、うっかり男子にぶつかってる。
少し、おっちょこちょい。


風子ちゃん
明るいし、話しやすい
で、劣等感を持ってるみたい
それは、皆がもってるから気にしない
一緒にいて楽だ

真田、からかってみよう


その前に、「聖人君子」の正確な意味、忘れちゃったな







I am not a holy man,
どこにでもいる
少年の場合




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