She falls in love!

□Case of Renji
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柳蓮二の場合−

今年は誰とも一緒ではないか

残念だなと思っていると背中を、とんとんと叩かれた。
随分と低い位置だな。


「柳くん?」

呼ばれて振り返れば、小柄な女子がいた。

「良稚風子だったか」確信はあるが、礼儀もあるだろう。


俺の言葉に、うんと頷いた彼女は、人懐っこい笑みで応じた。

出席番号と席の数の関係で隣になった風子は、弦一郎のことを尋ねてくるようになった。

正直なところ、あの堅物の弦一郎を好く者などと思いはしたが、実際風子以外にもいるのは知っていた。

だが、弦一郎のこういった類の話については、データが全くない。

プライドもあるが、不完全なデータを伝える程落ちぶれてはいない。

そう、風子には正直な話しかしなかった。


だから、風子と同じクラスになって一ヶ月が経とうかという頃、風子が部室前で真田を待っていたのは驚いた。




二人が距離を縮めていくのを観察するのは、日課となっていた。

俺の中での「良稚風子」という女子の位置付けも、変化していった。

彼女を呼び捨てにすることにしたのは、弦一郎の反応をみたいという思いもあったが、自分の周りにはいないタイプだからという理由だ。


最近、風子の様子がおかしい。

クラスでは、彼女がぼーっとしているせいか妙に活気がない。



若竹も大崎も分からないと首を傾げたことから、原因は恐らくアレだろう。

所属する生徒会には、弦一郎を好く女子がいる。

佐倉などは友人としてだが、吹田は違う。

これが実際に風子以外にも、弦一郎を好くからがいるという裏付けだ。


吹田は、弦一郎が言うように文武両道が出来ている女子で、性格が悪い訳でもない。
強いて言うなれば、勝ち気なだけだ。


こういうタイプはどちらかと言うと、精市や俺や仁王と相性が良い。
だが、俺は単なる生徒会役員としてしか、見ていない。事実だ。


たった二、三ヶ月ではあるが、風子の傍にいることは多いから、風子の性格も理解出来る。


劣等感をもっていることなどな。
友人がすぐに出来るのは、自分にないモノを受け入れられる度量があるからだと俺は確信している。

事実、俺もそうだ。
それを確信した時、風子を名前で呼ぼうと思った。


話が逸れたが、風子は恐らく大丈夫だろう。
なにせ、周囲の人間に恵まれているからな。

それに、吹田も気付く。弦一郎が風子という女子と付き合っている理由に

始まりなど大したものではない。きっかけが弦一郎の有り得ない誤解だろうと。弦一郎が、きちんと自分は風子を知らないと伝えただけで十分だ。

本人たちは気付いていないだろうがな。
まぁ、それも良いだろう。



「柳先ぱーい!」

赤也か
また、弦一郎に説教されたか

「真田先輩、風子先輩と付き合っても変わんないんスよね」

あぁあと大きな溜め息を吐き出した赤也は、ぐだりと座り込んだ。

「変わらないから弦一郎なのだよ」

「うわ、有り得ないスとお前は言う」


う、と叱られたような表情をする赤也の頭に手を置いた。

自分で言うのもなんだが、俺の髪質は良い。だが、赤也のふわふわ、もじゃもじゃした髪もそれなりに。


「赤也、精市が呼びに来るぞ」

ウィースと立ち上がり様に、真田先輩らしいやと聞こえた。





兎にも角にも、二人の付き合いは微笑ましいということだ。
昨今多い、中学生の交際とは違うところが二人らしいとも言える。


さて、精市に呼ばれるだろうから行こう






参謀の場合





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