She falls in love!

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風子が乃里子と祥子に打ち明け、真田がクラスメートの前で風子との交際を是と答えた翌日、別段変化はなかった。


国語の教科書をしまい、風子は鞄から弁当箱と水筒を取り出した。

「今日は水筒なのか」


気付いた柳が、大崎に机を向かい合わせにさせた。


「あれね、お父さんが使うんだって」

苦笑して、赤い水筒を何気なく振った。


「あれ?柳生たちは」

首を傾げて教室に入ってきたのは、幸村だ。

幸村は女子に人気があり、クラスの女子は息を飲んだ。

ふわふわと揺れる藍色の髪を鬱陶しそうに払う。


「部活みたいにつけてりゃ良いのにさ」

肩を揺らして幸村の後ろから入ってきたのは、坊主頭の栗田敬太だ。

「怒られるから嫌」



「風子じゃん!」
あれま、とわざとらしく手を広げた栗田の手が幸村を小突いた。

自分より大きい幸村を見上げ、小学校が一緒だったんだよと言った。



「栗坊」

幸村がぐりぐりと栗田の頭を撫でる様子に笑いを堪えた。


「乃里子ー、そっちに行っていいの?」

風子が、あれっと思う間もなく祥子はツカツカと風子たちの元へやってきた。


「大所帯だな。大崎、椅子だけでも借りろ」

「へーい、てか俺かよ」


大崎は、周りの使っていない椅子を拝借した。



「む、栗田も来たのか」

「そんなあからさまに嫌がってはいけませんよ」

「ちょっ!真田、嫌なの!?」

「誰も嫌がってはおらん。柳生、からかってやるな」

「丸井くんがいない分、あ、大崎くんがいるので変わりませんね」

「やぎゅー!」




結局、大所帯のまま昼食を取ることになった。

「栗坊が来るなんてね」

風子は梅干しを避け、卵焼きを摘んだ。

「風子、嫌いなのか?」

「好きだよ。だから、最後なの。真田くんは?」

「そうか。俺も好きだな」


風子の向かいが真田で、右隣りが柳、左隣りが柳生というのは当然となっていた。

しかし、今日は柳生が座ろうとした時に祥子が、有り得ないと文句を言い出したのだ。

そして珍しく柳生がやり合う姿に、柳が面白いとデータを取りはじめた。


その隙を狙っていたのか定かではないが、乃里子が柳生の指定席を奪った。


「なぁ、風子は何で柳とかと飯食ってんの?」

栗田がお握りを頬張ったまま喋るので、両隣の柳生と祥子に怒られた。



「仲良しだからだよね、柳くん?」


何を言うかと思えば…
栗坊ってば!


「嬉しいな、風子がそう言ってくれるのは」

ふっと笑った柳に栗田は、驚いた。


柳が女子に笑いかけた!
あんまり、女子と喋んねぇんじゃねぇのかよ!





「けどよ、真田と付き合ってんだろ?」

栗田の発言に、教室が静まり返った。


ぼんっと赤くなる風子の顔、それを見た真田までもが口元を押さえ、視線を逸らした。



「待て、落ち着け、俺!柳、本当か?」

本来なら本人に聞けば良いのだが、確実性を求めるなら柳とばかりに大崎は立ち上がった。



「弦一郎、良いのだろう?」

真田は、あぁと小さな声を出した。


「弦一郎と風子は交際しているよ」

祥子と乃里子は、大丈夫だろうかと心配をしたが、思ったより真田の周囲が文句を言う様子を見せないので安心した。



「だからさ、二人で食べてるのかと思ったんだよ。帰り道だって、俺達と一緒じゃん」

栗田は不思議だよなぁ、とお握りを頬張った。

と、真田がそれはだなと箸を置いて、口元から手を離した。



「俺達には俺達の付き合い方があるということだ」

真田の言葉にクラスは、沸き立った。

流石真田だな、と男子がはしゃぎ、女子は幸村くんも彼女いるのかしらと微妙にずれたことを口にしていた。

当の本人の風子は、恥ずかしいのか乃里子に抱き着いている。


「風子、まだ残っているぞ」

真田の言葉に、うんうん頷いてそろりと顔をあげると、皆が皆生暖かい視線を送ってきた。



こうして真田と風子の交際は、皆の知るところとなった。



二人が校門前で会えば、風子は倉敷に泣きつかれた。


「妹が嫁にいった気分だぜ」

「どうも」

倉敷は真田をからかおうとしたが、その前に幸村に蹴飛ばされた。


真田と風子は、テニス部の集団の後方を着いていった。



(柳生、良かったかな?)(栗坊がいたのが良かったかと)(ほう、柳生も栗坊と)(駄目ですか)(いいんじゃない?)

(柳先輩!真田先輩たちのこと皆、知らなかったんスね)(切原くんがいましたね)(無理だね)(あぁ)(何がスか?)



付き合い方





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