She falls in love!

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分かんないし
進まないし…

消しかすまみれの数学のノートを押しやり、風子は勉強家机から離れた。

風子が小学館に入学する時に祖父から送られた勉強机の上には、テスト範囲のプリントやワークが積まれている。

そして、今風子の頭の中を占めているのは、吹田エリカの諦めていないという言葉。


吹田さん、か…
柳くんとかに聞いてみようか


風子はベッドに寝転がり、お気に入りの犬の抱きまくらに顔を押し付けた。



ひたすら、もごもごとやる瀬ない気持ちを吐き出せずにいると、ノックされた。




「な、に?」

「早く寝なさいよ」
母親の言葉に置き時計を見れば、既に日付が変わっていた。



母親の足音が遠ざかる。
風子は数学をやることを諦めて、ベッドに潜り込んだ。



暗がりに慣れだし、天井の木目を数える。
別に、落ち着きやしない…

風子は眠ることに、努力した、余計なことを考えずに。





二日間のテストは終わり、午後から部活が再開される。

かく言う風子も、占拠された図書室に入り浸れるようになるので、少し気持ちが上がった。



「そして何で…こんなに大勢なの?」

風子の目の前には、テニス部員と友人が仲良く弁当を広げている。


「駄目かな?」

幸村が大崎の隣で目をぱちくりさせた。

風子からすれば、友達が増えたという認識なので問題はない。



「おった!参謀のクラスじゃったか」

「ジャッカルが遅いせいだろぃ」

「丸井くんが悪いんですよ」

「柳生、用は済んだのか」
真田の問いに、えぇと答え風子の隣に座った。

何故か、定位置になりつつある柳生の席に風子は、フェミニストと訳の分からない解釈をしていた。



「丸井、うるせー」

大崎が耳を押さえ、立ち上がった。


「仲、悪いの?」

風子の疑問に答えたのは、乃里子だ。

「違う、腐れ縁だから何でも言えるのよ。ていうか、あんたらがうるさい」

乃里子の一喝に二人はビクリと肩を揺らし、椅子に座った。




「今回も柳生が一番かな」
社会、間違えたと少し不機嫌に幸村が続けた。

「柳生くん、凄いんだねぇ」


風子が隣の紳士を見ると、皆さんもですよと言った。


「柳くんとは大して差がありません。真田くんと幸村くんだって上位にいますし。仁王くんと丸井くんは偏っていますがね。ジャッカルは安定感がありますから」

褒めてねぇだろと呟いたジャッカルを、丸井がげらげらと笑った。

が、仁王にトータルじゃ俺らは変わらんじゃろと黙らされていた。



「まぁ、生徒会ズは凄いよね」
乃里子は食べていたおにぎりを置いて、箸に持ち替えた。


「そうなの?」
頭を過ぎったのは、吹田エリカだ。

「吹田さんも?」


風子の向かいにいる真田が、あぁと頷いた。


「吹田は文武両道だ。部活は確か、バレーだったか」

柳が、そうだと答えた。


「そうなんだね」
風子は不自然にならないよう、他の三人のことを尋ねた。



「海老河はおちゃらけてるぜ」
思い出し笑いを始めたジャッカルに、幸村が珍しいねと。

「まっしーもそうだね。佐倉と付き合ってるんだろう」

幸村のカミングアウトに丸井が、あんぐりと口を開けた。


「ブンちゃん、佐倉のこと可愛いと言っとったの」
仁王は牛乳パックのストローをがじがじと噛む。


おやめなさいと柳生は言ったが、大して止める気はないのだろう。




「凄い人ばっかり!」

風子は、太刀打ちできないと確信した。


だって、真田くんが文武両道って言うくらいだもん




成績が張り出されるまで、あと四日。



文武両道





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