She falls in love!
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風子と真田の関係は相も変わらず、不思議なもので。
言うなれば、父親と娘のように周りからは見られていた。
勿論、二人が付き合っていることを知っているのはテニス部だけで、既に一月弱。
風子は、今の状態に甘んじていた。
だからこそ、これから起こることに気付かなかった。
いや、気付けなかったのだ。
柳が生徒会書記に就任して暫く、中間考査の時期に入った。
テスト一週間前ともなれば、当然常勝を掲げるテニス部も部活動停止となる。
それとともに放課後に残る生徒も増え、風子の居場所である立海が誇る図書室も空席などなくなる。
「これだからテストはイヤなんだよね」
「風子の場合、テストそのものだろう」
「む、テスト勉強にはしっかり取り組まねばならん」
「風子ちゃんの苦手は数学かい?」
「何で、テニス部が揃ってんのよ…」
柳から渡されたプリントを嫌々受け取る風子に、真田は全くと呆れていた。
そして幸村は、真田のノートを覗きながら風子の苦悩ぶりを笑っていた。
若竹乃里子は、目の前に広がる光景に有り得ないねと呟いた。
「仕方あるまい、風子の数学の出来なさは酷いらしいからな」
本当かと真田が風子に尋ねると、うんと頷いた。
「苦手なのは数学と理科」
げんなりと理科のワークを真田に押しやる風子。
真田は苦手はいかんと言いながらも、また一つ風子を知ることが出来たなと内心、嬉しかった。
そして考査を三日後に控えたある日、風子は司書教諭への用を済ませ、廊下をたらたらと歩いていた。
教室では放課後テニス部勉強会が開かれ、風子も問答無用で参加が義務づけられていた。
やらないだろう、と見透かされた柳によって。
別段それがイヤな訳でもなく、ただ真田がいる自分の教室にどんな顔をして入るべきか、を悩んでいるから自然と歩みは緩やかになった。
「貴女が、良稚風子さん?」
不意に名前を呼ばれた風子は、たった今通りすがった女子に振り向いた。
「はい。確か、吹田さん?庶務の吹田エリカさん」
風子とさほど変わらない身長で、色白のエリカがジッと風子を見据える。
ざわりと吹いた風が、エリカの黒髪を流した。
そっと髪を押さえる仕種に風子は思わず、綺麗ねと言った。
風子の言葉が気に障ったのか、エリカは髪から手を離した。
「何か?」
「私、A組なの。真田くんが、好きなの」
なにを、言ってる、の?
風子は自分の心臓が落ちていかないようにか、右手で胸を押さえた。
エリカは風子の様子を知ってか知らずか、ぱっちりとした瞳で見つめたまま続けた。
「付き合ってるのよね、一応。真田くんに貴女は相応しくないわ」
エリカは風子が口を挟む前に、諦めていないのよ私、と一つ前に出た。
動けない風子は、廊下と上靴が鳴らしたキュという音にさえ、驚いた。
「覚えておいてね」
黒髪とスカートを翻し、風子の答えも求めることなくエリカは立ち去った。
真田くんは、人気がある
テニスの実力も…
頭も良い
皆に厳しいし、優しい…
私みたいに真田くんを好きになる人がいて、当たり前なんだった
風子は何故今まで気付かなかったのか、と唇を噛み締めた。
悔しさよりも、悲しさと劣等感が風子の胸に去来した。
そして随分と時間をかけて戻った教室にまだ真田はおらず、風子はホッとした。
「真田は用事だってさ」
幸村はつまんないの、とぼやいて机に体を投げ出した。
その際に落ちた柳の下敷きを拾ったのは、風子だ。
「何かあった?」
「何が?何もないよー」
幸村が訝しげに尋ねるが、風子はいつもの調子で躱す。
「風子、ワークの答え貸して」
「優しい風子様が貸してしんぜよう」
風子は乃里子の腰に抱き着いた。
額に当たるブレザーのボタンが痛かった。
状況に
甘んじる
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