She falls in love!

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「10分休憩だ」

幸村の指示に二年生は散り散りになる。

水分補給をする者もいれば、タオルで汗を拭う者もいる。


それを目にした風子は、自分の膝を隠していた真田のタオルを手にした。


流石にまずいよね…

風子は、しゃがみ込んで鞄の中に入れてある予備のハンドタオルを取り出した。

水玉だけど良いかな?


風子は真田のタオルを仕舞い、テニスコートを見渡した。


問題はどうやって渡すか…
一部の人は知ってるみたいだけど…

面識がある人って言うと、やっぱり!


と、風子は柳を呼ぼうとしたのだが、近くにいない。



おや?

風子の様子に気付いた柳生は、フェンス越しに声をかけた。


「どうしましたか?」


ナイスタイミング!
風子は、柳生に手を振った。


私に振ってどうするんでしょう

無邪気な風子に用向きを聞けば、柳生は少し驚いた。



「真田くんがタオル…」

「だから、これ!ピンクの水玉だけど無いより良いかなと思ってさ」

やっぱりイヤかな?


不安そうに自分を見る風子に柳生は、大丈夫ですよと微笑んだ。

「優しいねぇ」
ぽろりと零した。

いいえ、と笑う柳生にそれを託した。





部活動終了時刻を迎えた時、辺りは橙に染まっていた。


間近で真田の部活姿を見ることが出来た風子は、誰かに胸の内を話したくなった。

図書室から見る真田くんとは違うなぁ…



どきどきと鼓動する心臓を抑え、どうしようかと辺りを見回した。

三人組は既に、帰っていた。



メールで伝えれば良いかな?
膝に載せていた真田のタオルに触れた。

目の前に近づければ、真田くんの匂いかなと引き寄せた。


ふんわりしたタオルに、知らない匂いがする。

これが真田くんの匂いかな



すんすんと嗅いでいると、頭に衝撃を受けた。


そこには、タオルの持ち主の真田が怪訝そうに立っていた。


見られた…


「何をしているかと聞きたいが、やめておこう」

敢えて触れない真田に、顔を見られない。



「タオルだが、洗って返そう」

着替えた真田は、帽子を被り直した。


それなら私も、と申し出たが構わないと真田は手を差し出した。

風子は断固譲らず、鞄にしまい込んだ。



「とにかく女子があのようにするでない」

帽子の鍔を下げる真田の表情が見えない。



風子は気をつけるね、とだけ言った。




真田が部室に向かうのを後ろから着いていく。

距離を詰めることなく、風子はただ小走りになった。




「真田先輩、帰りましょうよー」

ぶんぶん手を振る部員を見た風子は、真田のブレザーを引っ張った。



急に引っ張られた真田だったが、動じることなく何だ、と尋ねた。



「じゃぁ、私…帰るね。幸村くんと柳くんにお礼伝えてもらえるかな。お疲れ様」


早口で伝えると、風子は部員たちの前を走った。



風子は、もしかしたら真田が帰ろうと言ってくれるのでは、と思っていた。

けれど、後輩に誘われている真田を見て、気付いた。


別に一緒に帰る、とかじゃないんだ…

勝手に見に来ただけだったし…

勘違い、しまくりだ
恥ずかしい…



風子は、校門を出ると一人ゆっくり帰り道を辿った。





一方の真田は、まくし立てられ呆然としていた。

「帰らないんですか?」

駆け寄ってきた切原の後ろには、柳もいた。



「風子はどうした、呼びにいったのだろう。何故、先に帰った?」

柳の言葉に赤也は、ハッと気付いた。



「俺のせいっすよね、と赤也は言う。が、風子も悪かろう。気にするな」

あぁと答えたものの、しっくりこないのか真田は、何かを考えていた。




「良稚風子が、幸村と蓮二に感謝していると」

ちらりと窺う真田に、柳はほくそ笑んだ。



随分と気にしているようだな
予想外だったが、良いだろう


柳は幸村と共に、風子を見学を勧めたことを話した。



「そうか」

そう言ったきり黙り込んだ真田は、部員たちと帰路に着いた。



柳は別れ際、真田に一つ提案をした。



「弦一郎、お前はメールが苦手だろう。それなら、明日の昼は俺のクラスに来い。そうすれば、風子を知ることが出来る」

柳生も賛成するだろうと付け加えて。



「…あぁ」





その日の真田は、自分が感じた寂しさの原因を知ることが出来ずに終わった。




しかし、良稚は一体…





(分かりました、明日は引きずってでも連れていきます)(あぁ、くれぐれも丸井たちに気付かれないようにな)(努力しましょう)







返却するから





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