She falls in love!
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昨夜、驚いたことに真田からメールが来た風子は、教室に入ってきた柳に、うへへへっと笑いかけた。
「弦一郎からメールが来た確率、73%。締まりのない顔だ」
聞いてと言わんばかりの表情に、柳は分かったからと風子の体を引きはがした。
「おい、あれから3週間だが本当にメールをしていないとは。予想はしていたがな」
弦一郎が風子に自分の考えを成り行きとは言え、伝えてから早3週間か
仕方ないと言えば、仕方ないな
柳は目の前で、心底嬉しそうに笑う風子を見た。
「内容は何だ」
「ん、俺はテニスが好きだが良稚はどうだって。だから、ルールとかさっぱりだけど見るのは好きだよって。えへへへぇ」
「それから」
「そうか。夜分にすまないって」
「それで終わったの?真田らしいけどね」
第三者の介入に風子は、誰だとその人物を見た。
「幸村、どうした」
そこには、幸村が楽しそうに加わっていた。
面白そうだから、と笑う幸村に風子は、びっくりしていた。
「大丈夫だよ。別に君に意地悪なんかしないから」
くすくす笑い、柳に手をぺろんと出した。
「辞書を貸して欲しいと、お前は言う」
分かってるなら早くと幸村に促された柳。
風子は、幸村の顔をジッと見ている。
「何かついてる?」
「違うよ。綺麗な顔だねぇ…柳くんもだけどさぁ」
えへえへ笑う風子に、幸村は拍子抜けした。
話しやす過ぎるね
真田が良稚さんのことを気にかける理由が分からなくもないなぁ
くすくす笑う柳、ただ微笑む幸村の二人に風子は、首を傾げた。
「ね、今日のお昼は真田も一緒に食べよう」
僕もねと幸村が提案した。
が、風子はすぐに首を横に振る。
「駄目、真田くんに迷惑になっちゃう。テニス部とか友達と食べてるのに。それに、知られたくないだろうから」
柳は席に座り、幸村を見上げた。
「でもさ、一緒に帰ってないんだろう」
トーンを下げた幸村に風子は、まぁと視線を逸らす。
「最近は、月水金が部活動終了時刻までいるだろう」
口を挟んだ柳に風子は、そりゃ知ってるよねと苦笑した。
「それなら、見学に来てる子の中に紛れ込みなよ。近くで見てごらん」
風子は不思議に思った。
どうして気にかけてくれるんだろう?
幸村は気付いたのか、柳の前の席に座る。
普段なら風子の指定席だ。
「良いじゃないか。見たいと思わない?」
「見たいけどね、真田くんの邪魔になりたくないし。他の人もイヤじゃない?」
風子、と柳がトントンと机を長い指で叩く。
何かと柳を心持ち見下ろせば、来いとだけ。
「あれ、蓮二って呼び捨てなの?」
突拍子もなく話が逸れ、風子はどうしようと悩んだまま、幸村にそうだよと。
「それなら、俺も良いかな?」
ふふ、と笑う幸村は柳とは違う柔らかさをもつ。
どうぞと笑う風子に、柳は放課後だと告げた。
無理、無理と後退る風子を、幸村は良しとせず来てねと笑った。
「テニスをしてる真田を目の前で見れば、格好いいのが分かるよ」
「風子が知ってるよと考えている」
幸村は尚更だ、と柳に引っ張ってくるように言い、辞書を借りていった。
「幸村くんの本題は?」
「辞書と風子を見たかったんだろう」
幸村の座っていた椅子に座ろうとすると、幸村のファンに主張された。
今、ジャンケン中だからと。
あれまー…
大崎くんよ、憐れだね
柳も同じことを考えていたのか、フンと口の端を上げた。
(逃げるな)(図書室で見てるよ)(おや、どうされました?)(や、柳生くん、へるぷ!)(発音が悪い。見学させる)(あぁ、行きましょうか)(え、え、柳生くんて紳士っていう噂が)(あれは柳生の皮を被った仁王だ)(うそぉ!)(プリッ)
彼を見ろ
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