She falls in love!

□09
1ページ/1ページ






風子は、携帯を片手に突っ伏していた。

目の前には、芥川龍之介の産物がべろりと開かれたままだ。

栞が飛ばないように黒猫のペーパーウエイトが欠伸をしたまま、伸びている。

これは風子が祖母から貰ったもので、家には二体の兄弟猫が好き勝手に本棚に並んでいる。


「一緒に帰りたいなぁ」

風子は、新規メール作成画面をぶちりと消した。

黒猫は喋らない。





せめて、メール…

風子は、駄目だと項垂れた。


第一、お疲れ様なんて言えない
当たり前に疲れてるだろうし…

権利ないよなぁ



風子は、黒猫から栞を解放し、芥川龍之介の産物に挟む。


ぺたぺたと足音を鳴らし、窓際に。


黒い帽子を被った真田が、コートで駆けている。



凄いなぁ…




あ、柳くんだ

コートに入った柳は、二言三言話すとクルリと風子のいる校舎を見上げた。



何だろう?
誰かいるのかな

風子が、桟に乗り出し様子を眺めていると、柳は風子を指差した。



「え」


遠目でも分かるほどに、ニヤリと笑う柳。

隣では真田が、ふるふると震えていた。



「たるんどるー!!」

「何ごと?」



すぐさま駆け出した真田でさえも、風子は目で追う。



「風子、もう少しで試合をやる。見ていろ」

柳の楽しそうな笑みに複雑だったが、風子はありがとうと手を振った。






(赤也と試合をしよう)(構わんが)(風子が見ている確率100%)(む…)(あそこだ)(な、な…!)(健気だな)(たるんどるー!)





参謀に見つけられた






<<<<

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ