龍は雲に従う

□第五章〜対決〜
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それを聞いて、紐心は目を閉じた。そして静かに、

「・・・それは出来ませんね」
「どうしてもですか?」
「私は異形としてではなく、人として生きようと決めたのですよ。そしてこのやりやすく、利益も多い商売を見つけた…。どうしても止めると言うなら・・・私はあなたを排除します」

そして目を開く。その目は黒ではなく、真紅であった。次に紐心の周りが白濁し始め、それが晴れた時、紐心のいた所には白い一匹の大蛇がいた。体長は光元の五倍もあろうか。

大蛇はユラリととぐろを巻く。光元はそれを見て深いため息をついた。

「やはり穏便にはいかないかか。しょうがないな…」

光元は右手で剣印を結ぶ。
その時、大蛇がとぐろを巻いた状態から一気に伸び上がった。長大な毒牙が光元に迫る―――。






それと同じ頃、白河は酒をゆるりと口に運んでいた。そんなさりげない動作も、上品で隙がない。白河は酒を飲み干し、椀を机に置いた。

その時、襖の向こうに人影が写った。紐心より大きな人影だ。白河はその影をおもしろそうに見つめる。

―――誰でしょうかね・・・。―――

その時、人影が襖に手をかけて、

ガタガタガタッ!!

「なんだこの襖!開かねぇじゃねぇか!!」

しかし襖には何の術もかけられてはいない。最高級の部屋であるから滑りも良いはずである。

「くそ。この襖、俺にケンカ売ってんか?」

なぜか襖にケンカ腰である。

「しゃらくせぇ!!引いてダメなら押してみろぉ!!」

バドン!と鈍い音がして、襖が枠から外れ、室内に向かって倒れた。しかし、一番奥にいた白河には何の支障もなかった。

襖の向こうで片足を突き出して立っていたのは、酒を飲んで顔を紅く染めた黄金色の髪と瞳をした男であった。







・・・・・・まぁ、はっきり言えばコーちゃんだ。


コーちゃんが満足そうに足を下ろしてふと前を向けば、そこで先ほどまでの出来事を、たいして驚きもせずに見ていた男と目がかち合った。

「お前が白河って奴か?」

初対面の相手になぜかドスの効いた声音で聞く。だが白河は平然と、

「いかにも。私が白河ですが?」
「なら話は早いな」

コーちゃんはスラリと刀を抜いた。そしてその刃を白河に向けて、

「立ちな。俺の酷薄で悪賢い主人がふん縛ってでも連れて来いと言うんでな」

「ほぅ。・・・判りました」

白河は立ち上がり、

「ですが―――」


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