龍は雲に従う

□第四章〜龍と雲〜
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「…帰る」
「黄龍お前、さっきから怒り通しだな。酒でも飲んでみろ。気が晴れるぞ」
「……」

それは満更でもない。帰ったら、光元に頼んでみるか。

「…じゃあな」

いくら怒っていても、最期の言葉は忘れない。

刹那、強大な妖気が立ち上ぼり、コーちゃんは本性に戻る。

黄金色の鱗が燦然と煌めく。首元と背には橙色の毛が妖気を受けてユラユラと絶え間なく揺れ、頭頂には二股に分かれた一対の角がある。人間が古代より『龍』と名付けたそのものの姿。原身の黄龍の威風堂々たる風格は、赤龍の樺羅さえも圧倒する。

鱗と同じ黄金色をした双眸で樺羅を一瞥し、黄龍は金の煌めきを残して天へと消えた。樺羅はそれを見上げながら呟く。

「『雲は龍に従い風は虎に従う』というが、奴が『雲』と呼んだのはその意味も含まれているんだろうかな?…もしそうなら、相当奴は気に入ってるんだろうな」

そしてフッと笑みを見せて、

「ま、意味は逆みたいだけど」

『雲は龍に従い風は虎に従う』の意味は、『英雄の下には賢臣がいる』ということである。今の主従の関係では、術師が英雄で異形が賢臣であろう。

「…頑張れよ、黄龍」

樺羅はそう言うと立ち上がり、後ろで括った髪を翻して歩き始めた。どこということはない。ただ気の向くままに。ただ川沿いに。

そうすれば、もう会えないはずの主人に会えるような気がして。


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