龍は雲に従う

□第二章〜それは光陰の如く〜
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「大体、なんで俺なんだ!?自由気ままに暮らしてた俺なんだよ!?」
「んーそうだねぇ、龍って放浪癖が強いからねぇ。でもコーちゃん、式神ひとつで現れてくれたし、コーちゃん強いから!」
「そうかそうか俺が強いからって言うなら仕方ない・・・ワケあるかっ!何だ、手軽さが理由かっ?俺が強いなんて当たり前だろうが!」
「うっわーすっごい自意識過剰発言〜」
「黄龍みくびんなよ?黄龍って言ったらなぁ、雷と土気が使えてだなぁ、空は自由に飛べるし、天界では・・・」

漠然と始まったコーちゃんによる言葉を尽くした黄龍講義。真剣な面差しで話す彼の横顔を見ながら光元無表情であった。眇(すが)めた眼差しは、気丈な黄龍の内なる何かを見透かしているように哀れみが籠められ、開かれた口唇は重たい哀愁を含めた声音を呟く。

「コーちゃんじゃないと…いけなかったんだ……」

そのあまりに密やかでか細い声は、黄龍の耳には届かず・・・。しかし口を開いた気配は感じたのか、立ち止まった黄龍が疑問符を浮かべて振り向いた。

「ん?何か言ったか?」

しかしその頃には既に光元の顔から憂いの表情は消えており、逆に笑みさえ浮かべて首を横に振った。

「ううん、別に何でも。ほらほら、先急ごうよ」
「お、おう。ところでお前、さっきから何処に向かってんだ?」
「陰陽寮で賜った依頼の一環で、ちょっと難しそうなんだけど…あ、そうだ!僕のお手伝いして成功したら、コーちゃんの名前の効力消してあげてもいいよ!」
「ホントか!?」

コーちゃんの顔が喜びに輝く。しかしその喜悦も一瞬でくすみ、代りに疑いの眼差しで発案者を見やる。

「別の名前付けるとか、絶対失敗する任務とか言うんじゃねぇだろうな?」

すると光元は苦笑し、

「上手くやれば絶対にやり遂げられるお仕事だから大丈夫!布石も打っといたしね。言葉は言霊(ことだま)。本当になるんだから慎重に使わないと」

そこまで聞いてやっとコーちゃんも納得したらしい。顔に薄ら笑みを浮かべるくらいの余裕を持って腕を組んだ。

「なら話は早い。一体俺は何をすりゃあいいんだ?」 



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