設定・外伝集

□天への願いを風に乗せ
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「わぁ・・・!」

連れて行かれたのはいくつもある巨大な戦闘船『崩牙』の内の一つ。その甲板で銀珂は感嘆の声を上げて瞳を輝かせた。
目の前にそびえるのは『崩牙』の柱の一本に括りつけられた、若草色をした長大な一本の木。しかしその木は幹さえ若草の色を湛え、等間隔で白く浮いた一文字の筋を持っている。幹の表面は光を弾くほどに滑らかで節くれなど見当たらない。上方では幹が分かれ枝となり、柳にも似た葉を付けていた。等間隔に節があるこの木の作りはしなりに優れ、枝は幹の先端から集中して生えているにも関わらず、背の低い銀珂のすぐ頭上まで垂れる葉もある。

「これは『竹』と申すのですぞ、御曹司」
「たけ、ですか?」
「左様」

銀珂の背後に立ち、氷影がにこやかに説明する。

「今日は世では『七夕』と申す行事がございまして、この竹に願い事を書いた短冊を吊るすのですぞ。ささ、御曹司もお一つ・・・」

屈んだ氷影が差し出した手には、縦長の白紙の束と赤・青・黄・白・黒の五色の紐、そして硯と筆があった。

「ありがとうございます」

用意の良い側近に感謝しつつそれらを床に並べ、銀珂は一枚の短冊に筆を走らせる。



『はやくちちうえのように、つよくおおきくなれますように』



「・・・大きくでましたなぁ」

書きあがった短冊を眺め、氷影が大きく頷く。

「御曹司の将来最大の目標ですな!」
「はいっ!」

年に一度の願いとしてはかなり規模が大きいものであると暗に言っている訳だが銀珂は気にしない。それで氷影も『それでこそ御曹司』と、納得の表情を浮かべてさえいる。
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