設定・外伝集
□リレー小説〜学園物語〜
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閑静な住宅街。そこにある宿舎『五方苑』の一室の、今夜の夕食はハンバーグのようだ。
真新しい木製のテーブルに並んだ、平たい皿に乗る大きなハンバーグ。添えられた野菜は甘い味付けの炒めた人参にマッシュポテト。緑が足りないと思われたが、テーブルの中央にはシーザーサラダが。抜かりはない。
自らのハンバーグにつける手を止めないのは、金髪金目の二十代前半の青年。名前を龍牙土黄(りゅうが どおう)という。
ハンバーグが二つの皿にあるということは、もちろん共に食す者がいるわけだ。だが今、テーブルには土黄しかいない。もう一人は台所にいた。
「土黄、少々よろしいですか?」
もぐもぐもぐ。
声をかけた者を見つめ、土黄は咀嚼を続ける。
「…よろしい…ですか?」
もぐもぐもぐ。
声をかけた者を見つめ、土黄は咀嚼を……
「分かりましたから。飲み込んでからでよろしいですよ」
耐えられないとばかりの声が響いた。
「……で、なんだ?」
多少間が空き、土黄が聞き返す。相手は安堵の息を含んだ声音を出す。
「えぇ、明日の話なのですが―――」
「待て」
「今度は何です?」
「話の前にデザート食いてぇ」
「………あなたという方は…」
まるで子供。同じことを思ったのか、苦笑の声と同時に、製作中だったデザートが出される。美しい装飾のチョコケーキに、土黄の目が輝く。
「それで、明日の話なのですが、……で………ということに………」
ようやく話された内容。だが土黄は聞いていなかった。彼の脳内は、すでに甘味の虜だった。