設定・外伝集
□刹那を括り…
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『はかなきもの』
いつも皆で集まる場所に足を踏み入れる。しかし、今は狩衣姿の少年が一人いるだけだった。彼は笑顔を向けてくる。
「おかえり」
私は一礼して返し、疑問を問うた。
「…他の方が見当たらないようですが?」
「もうすぐ鶏の雛が孵るって話したら、皆して行っちゃった」
「そうですか…。この寒い時期に孵るというのは…少々不安になりますね」
凍えるほどの冷たい風は、新しく生まれた命にとっては凶器でしかないはずだ。時間の経過や暖寒の差で死の気配を感じることのない自分には想像しがたいけれど…。
暖かくなるまで、固い卵の殻の中に隠れていられればいいのだが、その時期を決めるのは天命であり本人ではない。
「大丈夫だよ」
少年は、笑みを深めて言うのだ。
「だって、神様が傍についてるじゃん?」
「フフッ、そうですね」
そんな小さな命も、支えがあれば生きていける。
この世に生を受けた瞬間から流れ落ち、いつかは尽きる命の時の砂。
人の括りに入るこの少年も、いつかはその砂の流れを止めるのだろう。
そしてきっと、私達はそれを静かに見送るのだ。
ならばせめて、その流れを最期まで止めぬように…。
ならばせめて、その時に悔いの残らぬように…。
それが私達にできること。
それだけしかない、私達のできること。
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なんか暗っぽくなっちゃいました。
なんとなく、私の短篇の書き方は詩みたいですね。司蝶小説もこんなだし…。
ある小説同盟にて、
『卵』『時の砂』『笑顔』
の単語を入れて小説を書く企画がありましたので、参加しました。
シーちゃんと光元の会話&シーちゃんの心理です。
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