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□漁夫の漁夫の利
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「あーいこーで、しょ!」
「なに!?またあいこなのか!?」
「俺いい加減疲れたんだが?」
「ふふん、なら手を引け。そして僕に勝利を譲れ」
「死んでも断る!」

どの位経っただろう?今だにハヤトとアードの決着はついていなかった。

「おい、まだ兄ちゃん達やってるぜ!」
「すげぇな。どんだけ続いてんだよ」
「お!またあいこだし!」

たかがじゃんけんでも、ここまで続くと一興。わんさかと庶民が集まってきていた。
その中に、青年と少女の二人組が紛れ込んでいた。青年はコーちゃん、少女はシューちゃんといった。

ただ、その二人の視線は傍らのケーキに注がれていたが。

「あ!あったよコーちゃん!さっき買ったケーキ!!」
「けぇきって何かよく判らんがな、とりあえず美味いもんなんだろ?」
「そうだよぉ。だから四つ買ったのに、三つになってたから探してたんだよ」

どうやらケーキ屋で、入れ違いが生じていたらしい。

「じゃあ解決だな。さっさと持って帰るぞ」
「でも、なんでこんな所に置いてあるんだろ?」
「さぁな。足でも生えたんじゃね?」

適当に返事を返して踵を返したコーちゃん。ケーキの箱を持って、シューちゃんはその後ろをついていった。

「あっ!ケーキがない!!」

すぐさま異変に気付いたのはレオ。

「「なに!?」」

ハヤトとアードが振り向いた先にケーキはなく、代わりに赤毛の少女がケーキの箱を持っていた。もちろん結論は…、

「「まぁてぇぇぇい!!」」
「キャーー!コーちゃん!誰か追っ掛けてきた!」
「なに?」

コーちゃんが振り返れば、すさまじい速度で走る青年達。問題がシューちゃんの手の中のものだと気付くはずもなく、反射的に体が動いていた。

「なんか知らねぇが走るぞシュー!」
「はーい!!楽しそーう!」
「あぁ!逃げた!」
「…僕達の潰した時間無駄にする気?」
「やっぱ盗みかよ!絶対逃がさん!」

こうして、駆けずり回る五人の姿が町中で見かけられたとか。


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