龍は雲に従う

□第六章〜終幕〜
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雷は宝物庫以外にもあちこちと落ちたようだ。広い宿の十数箇所から煙が上がっている。
それだけコーちゃんの気は高ぶっていた。酒が入っていることも一因であるが…。

コーちゃんと白河は「部屋は狭い」と言って路上へ出た。そして、今度は術を使って第二回戦を始めた。

白河は風を操る術に長けていた。コーちゃんがどこにいようと向かい風が吹き、風で動きの鈍くなったコーちゃん目掛けて風で出来た不可視な風刃が飛んでくる。

一方、コーちゃんは雷を使っている。雷の速さは風では抑えることが出来ないほど速い。それが、幾つも白河を狙う。

しかし、お互いそれらをよく避けていた。ここでの力も互角に見える。

「この風・・・うっとおしいな・・・」

コーちゃんは向かい風の苛立ちに耐えかねていた。動きが鈍くなることがじれったくてたまらない。

「こうなれば・・・」

コーちゃんは白河のいる方向に大量の雷を落とすと、一瞬、自分の周りに気を発した。周りの風が霧散し、風の感覚が消える。

「よし!」

次は白河に接近戦を仕掛けようと、先ほど雷を落とした方向に目を向ける。

が、そこに白河の姿はなかった。

「―――・・・れ?」
「どこを見ているのですか?」

耳元で白河の声がした。コーちゃんはハッと動きを止める。
白河はコーちゃんが風に気を取られている間に、追い風に乗って素早く後ろに回り込んだのだ。

「勝負の合間によそ見は頂けないですね」

コーちゃんの首元に風の鉾が突きつけられる。

「・・・勝負、ありましたね」

涼しい微笑みを浮かべて言う白河に少し苛立ちを覚えるが、この状態では物も言えない。


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