設定・外伝集

□山中の神馬
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時は平安。天上人住まう平安京を一つ抜ければ、人も通らぬ山々がそびえ並び立つ。そのいずれの山だろうか、木々の囲む名も無き道を、三人の人影が進んでいた。ひとつはやや先行し、もう二つは並ぶように。並行するうちの一つは、他と比べて妙に背丈が低かった。

「ちょっとー、進むの速いよー」

その小さな人影が不満の声をあげる。若草色の狩衣に黒色の指貫(さしぬき)姿、左目の上方で前髪を分けた少年・・・名を青
月光元。自称陰陽師の端くれである。

「迷子になるよ、コーちゃん!」
「コーちゃん言うなっ!」

怒鳴り返したのは前方を行く青年。ざんばらな黄金色の短髪に同色の切れ長の瞳、前半身をはだけさせる衣装に藍色の掛布をかけた野性味の強い出で立ち・・・彼の名はコーちゃんといい、黄龍という本性を隠している。

「青月殿の仰る通りですよ。この前、一人道に迷ったのをもうお忘れですか?」

柔らかい物腰で、光元と並ぶ青年が口を開く。銀灰の瞳に腰より長い白銀の長髪、白色の長衣に袖に切れ込みの入った紫の上着を羽織る、一見性別の見分けがつかないほどの美貌の持ち主・・・白虎の本性を隠す彼の名はシーちゃんという。
二人に責められてコーちゃんは苛立ちを募らせたのか、歩きながら振り向いて二人を睨みつける。

「うるせぇ!任務終わったんだからさっさと帰ればいいじゃねぇか!なんでこんなチンタラ歩かねぇといけねぇんだよ!?」
「コー、青月殿も何か理由があってのことでしょう。辛抱なさい」
「そうだよコーちゃん、たまには3人で歩くっていうのも楽しいじゃん」
「どーこーがーだーよー!!」

その場で地団駄踏んで憤慨するコーちゃん。よほど早く平安京に帰りたいらしい。ちなみに彼の内心では『あの戸棚に隠した菓子食べられたんじゃねぇか』や『あの屋根に隠した菓子(以下略)』など焦燥が駆け巡っている。以上蛇足的説明。
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