虎は苛政よりも猛し
□第三章〜死に舞〜
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「おいお前ら、何やってんだ?」
帰ってきたコーちゃん達を迎えたのは、五方庵居残り組の屋内をうろつき回る姿だった。辺りを見回す様子からして、何かを探しているらしい。
「あ、おかえり〜」
巡回する足を止めずに、光元が声をかける。止めないので先にあった出入口から外に抜けてしまい、誰もが返事を返せなかった。
「…で、何やってんだ?」
出入口に向けていた顔を前に戻すと、捜索隊から返事が返ってくる。
「さっきまで小屋で眠ってた男性が、突然消えちゃったのよ」
「…そりゃセー、クーがいつも以上に殺気を漂わせてるからじゃねぇか?」
「ち…、オレのセーに馴々しくしやがって!見つけたらタダじゃ済まさん!」
「…おいクー、屋根に飛刀突き立てて探すな。それ毒付いてんだろうが」
「どこかな〜?ねぇねぇ、どこにいると思う?」
「…なぁシュー、聞くのはいいが、そんな小せぇ壺覗いたっているわけねぇだろ」
あてもない捜索方法に溜め息をつくコーちゃん。だが、彼が捜索に加わっていても成果が認められないことは断言出来よう。
三人の捜索打ち切りから間もなくして、光元が帰ってくる。
「これだけ探しても見つからないから、外に逃げたのかもしれないねぇ…あ!見覚えあると思ったら、ミッチーの所の閑彦(しずひこ)君じゃないか!」
「こ、光元殿ぉ!?」
閑彦、と呼ばれた小姓は、光元に向かって悲痛な色を込めた頓狂な声をあげた。
「あれほど道長様を『ミッチー』呼ばわりするのはお止め下さいと申し上げているではありませんか!」
「もぅ、相変わらず堅苦しいなぁ、閑彦君は。本人いないんだから気楽にいこうよ」
「いけませんっ!!」
速答で猛烈な反対を見せる閑彦。
「…つーかほんとに、本人の前以外じゃお構いなしだな」
「確かに……」
コーちゃんの呆れ顔に、シーちゃんが同意した。
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