最奥の社

□反論者・抵抗者の屈伏
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森中に設けられた黒蛇族の本陣。黒禅に伴(ともな)われ歩を進める銀珂は、周囲を見回し密かに感心していた。

木々に隠れるようにして幕舎がそこかしこに点在している。その幕舎を守るための壁はない。しかし、周辺の大概の木上には矢術に長けた黒蛇族が潜んでいた。木々の影に潜む彼らは、警戒する必要のない今だからこそ気配を察知出来るが、いざとなれば木に完璧に擬態し、相手のがら空きの背中を射るのだろう。

本陣を本陣と思わせない陣形。しかし、伏兵以外にほとんどの人を割かず本陣に留めた今回の策は、その本陣に強力な防御力を備わせていた。
ちなみに白虎族には本陣が存在しない。族長自らが常に最前線に位置しているからだ。後衛部隊こそ拠点を後方に備えているが、人員は圧倒的に前線に回すことが出来る。防御の人員を攻撃に回す、超進攻型の陣形だ。

銀珂は窮地ながらも安堵の息を溢(こぼ)す。
このまま進んでいたら、毒矢で白虎族は大打撃を受けていただろう。だが、黒蛇族が弓矢を用いることは氷影達が報告をするはず。察して警戒もしてくれるだろう。

「心配せずともよろしいですよ…」

黒禅が楽しげに口を開く。

「貴方が私の傍にいる限りは毒矢が飛ぶことはありませんから」
「そう…ですか…」

どうやら我が身が射たれると懸念したと思われたらしい。言葉に詰まるが、とりあえず返事だけはしておく。


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