最奥の社

□目付け役の苦悩
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冷たい何かが喉を通りすぎる。満足に呼吸が出来ず息苦しい。思わずもがこうとするが、体に力が入らない。
そうこうしている内に再び口内に冷たい感覚を覚える。不快に感じた。息苦しさも限界で、僅か残るありったけの力を込めて右腕を前に突き出す。
突き出した手に、感触。口を塞いでいた何かが離れる。代わりに一気に空気が流れ込んできて、身体は反射的に呼吸困難を回避すべく、むせた。

「…ゴホッ、ゴホッ……」
「お気が付きましたか御曹司!!」
「ゴホッ…ひ、えい…?」

銀珂の段々と明確になってゆく視界一杯に、従者である青年氷影(ひえい)の顔があった。
白を基調とした身軽に動ける戦闘服を身につけており、頭頂で結った白銀の髪の毛先が項の辺りで揺れる。心配と不安で、青銀の瞳は今にも泣きだしそうにも見える。
互いの顔の位置と背中に当たる感覚からして、どうやら上半身を抱えられているらしい。

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