発つ鳥跡を濁す

□第六章〜朱雀の村〜
1ページ/6ページ

一度全てが焼け落ちた朱雀の村は、一年の内にすっかり修復されていた。櫓や家の位置もそのままだ。しかし、あの頃失われた何かがある。もう取り戻すことの出来ない何かが・・・。

耀は、一年前と同じ様に家の屋根にいた。片胡座をかいて座り、彼は待っていた。唯一となった同族を。最後の獲物を。

ふと、沈黙が破られた。前方の櫓にいる異形達が騒ぎ始めたのだ。そこに降ってきたのは、一つの小さな光。それは音もなく、櫓へと降りていった。
直後に、爆発と轟音。櫓が一瞬にして炎に飲み込まれ、異形達の断末魔の悲鳴が響く。黒い煙が立ち昇る中、その煙を突き破り、櫓を崩壊させた者が姿を現した。それは弓矢を構えた、紅い髪に同色の瞳を持つ少女だった。耀の瞳に嬉々とした色が映る。

「来たか!」

耀は素早く立ち上がった。両手で方天戟を構える。

「この一年、どれほどこの日を待ち望んだことか・・・。もう逃がしはせぬ!ここでお前を討つ!!」

耀は地を蹴って、得物を構える手に力を込めた。





得物を携え向かってくる耀を、シューちゃんは決然とした眼差しで見つめていた。
誰かが自分の為に傷付くのを見たくなかった。特に、心から信頼できる新しい友のいる今では・・・。だからここで、耀を止める。

シューちゃんは矢を放った。狙ったのは全ての生物の急所である心臓だ。シューちゃんは剣や槍などの、接近して戦う武器は上手く扱えない。その分、弓矢の扱いは抜きん出ていた。真っ向から向かってくる的を外す事などない。
しかし、耀は瞬時に反応し、前に構える戟を僅かに動かした。
そこは心臓と矢の直線状。矢が戟に当たって金属のぶつかり合う音が響き、耀は口元に笑みを浮かべた。

その時、軌道を外された矢尻が燃え上がった。そこから炎が伸び上がり、耀を拘束した。耀の顔から笑顔が吹き飛ぶ。

火気の異形に炎は効かない。だが、動きを封じるなら充分であった。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ