発つ鳥跡を濁す
□第五章〜決意〜
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光元は静かに口を閉じた。話したのはクーちゃんが『水流路』で光元を送り出した所まで。後は語らなくてもよい過去。これからも語られない過去。光元とシューちゃん、二人だけの秘密だ。
「…で、そのシューの兄貴が今頃になって現れた、と」
コーちゃんは少し悩んで、二人の同朋に目を向ける。
「クー、セー、お前等、異形の討伐を任されたんじゃなかったのか?」
「里にいた異形が、皆消えてた」
クーちゃんが問いに答える。
「シューの最後の技で撤退したらしくてな。何もやりようがなかった。もし、そいつらが人里を襲うなんて話があれば動くが、そんな話も聞かねぇしな」
「人里を襲えば、警戒の目が増えるからね。耀の目的達成の為に、それは避けたい事なんじゃない?」
光元が付け加えたその時、ガタッと音がした。見てみれば、コーちゃんが椅子から立ち上がっていた。
「シューの兄貴がどれほど強かろうが関係ねぇ!仲間に手ぇ出すなら叩き潰すのみだ!!」
「そっか。やっとコーちゃんにも仲間のありがたみっていうのが判ったんだね!」
ハッとコーちゃんが固まる。どうやら無意識に言葉が出たらしい。
「・・・・・・間違えた。俺の邪魔する奴は叩き潰すのみ―――」
「照れるなってコーちゃん!!」
「・・・コーちゃん言うな」
「まぁともかく、コーちゃんの思いはよ〜く判った」
「判らんでいい」
「『仲間に手ぇ出すなら』の所が最高だった!」
「感動しなくていい」
淡々とした口調で反論するコーちゃんに、光元は笑みを浮かべてみせる。
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