発つ鳥跡を濁す

□第一章〜集合〜
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ここは朱雀大路の東側を通る大宮大路。今そこは東市が開かれていた。
国の中心の市場なだけあって、多くの地方の人々が集い、路端に並ぶ店には食料から珍しい珍品まで、様々な商品が買い手を求めるように並んでる。
しかし、今市場の人々の目を釘付けにしているのは商品などではなかった。



悠然と大路を歩く、三人の男女である。



その三人の誰もが端整な顔立ちで、通常の倭国の人には無い髪と瞳の色をしていた。人目を引かぬはずがない。更に言えば、実は彼らは人ではない。この姿は、本性を隠す異形の仮の姿なのだ。

「う〜、なんたってこんなに物事は難しいんだ!?」

横に並んで歩く三人の、中心を行く青年が不機嫌そうにうめいた。黄金色の短髪をいじりながら歩く彼の、髪と同色の黄金の双眸が細められる。

「・・・物事と聞くと大げさに聞こえるわね」

呆れたようにそう言ったのは青年の隣を歩く美女であった。後ろを流れる長髪も優しげな瞳も、輝く海面を連想させる青海色である。

「今聞いてるのは・・・右と左の見分け方なんだけど。・・・じゃあもう一度聞わよ?右はどっち?」

なぜそんな子供にも出さないような問いを、と思うかもしれないが、問う彼女の顔は真剣そのものだった。なにせ・・・・・・彼は平然と左を指差すのだ。


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