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□ある日の討伐録
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今日も平安京では問題勃発。異形が出たらしく、ある三人が出没地に出向いた。
その三人とは、白虎のシー、朱雀のシュー、そして陰陽師の青月光元。シーとシューの名は光元がつけたものだ。
「青月殿、ここら辺では」
「うん、多分ね」
きょろきょろと辺りを見回しても、シーの視界に入るのは、彼らの近くの樹の下に寝そべる犬、風になびく草花程度だ。シューは犬の元へいくと、その伸びた耳を持ち上げたりして犬を構っている。
チリン、と犬の首輪が鳴った。はてなとシューが首を傾いだのも当然で、犬は金属で出来た首輪こそしているものの、鈴など全くついていない。
「……………?」
「どうしたんです、シュー」
「うーん、なんかこの犬鈴付けてないのに鈴の音がするから変だなぁって」
「え………?」
青月殿、シーが呟き光元に声をかけた時、一際強い風が地を捲った。
酷い砂埃で視界が悪くなった。砂埃の膜の向こうには、何やら見たことのない形。首輪から妖気が発生している。
「シュー!」
「異形!犬に取り憑いてたみたい…ッ」
ケホケホッとむせながらシーに声を飛ばすシュー。
「青月殿、聞きましたか!」
「うん、あまり好まないパターンだよ…!」
砂埃が遠くへ逃げ、やっと異形が両眸に映った。先ほどまでの気だるそうな犬の姿とは一変して、云ってしまえばグロテスクだ。
「やみよにはえるかがりびのごとく、もえさかれ!れっかしょうらい!」
シューの舌ったらずな音が紡ぐ術で異形の犬は炎に包まれた。炎が消えたあと異形は燃え尽きていたが、諸悪の根源らしき首輪だけが残っていた。
これは僕じゃあダメ、シーちゃんお願いっ
シューの声にシーは黙って頷くと、その首輪を拾い上げた。
「………消えゆく霞の如く、昇華せよ。解金招来」
ひゅおっと強い風と共に首輪が包まれた。
しかし、その首輪には全くと言っていいほどに変化がない。消えるどころか、傷さえついていないのだ。これには流石のシーもシューも、そして光元も驚いた。が、
「………妖気、感じられないんだけど…」
ポツリと零れた光元の言葉に二人は言葉をなくした。首輪には、なんの異形も取り憑いていなかったのだ。
はあぁ…と呆れか安堵かわからない溜め息をつくシーだが、内心やはりほっとしているようだ。
「…たまにはこんなこと、あるのかもねっ?」
「度々あったら気が滅入りますけどね」
苦笑して答えるシーは続けて、帰りましょうかと言った。首輪は光元に預け、三人は軽くなった肩を並べて仲間のいるトコロへと戻った。


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