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□『私と彼方と私と彼と彼方と彼と彼と』
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『私と彼方と私と彼と彼方と彼と彼と』



我が誰かに一生を捧げることが出来るなら、幸せなことだろう。


「………」

朱夏の炎を受けて、転生した我は、…何処かわからない所にいた。

転生には、二つある。

同じ姿、記憶を持ち、別のifの世界に行ってしまうか、記憶を持ち、また母から生まれてくるか。


我は前者だったらしい。



どうするかと頭を掻き、ドカリとその場に座る。

…どうやら此処は我のいた世界とは全然違うようだな。
建物に靄…いや、霧か?がかかってよく見えないが、我のいた世界には、こんな建物はなかったように思う。

「誰だ?!」
「ッ?!」

キィン――…と洗礼された鈴の音のような音が辺りに響き渡る。
透き通るぐらい透明で鋭利な剣の歯が、こちらを向いていた。
「……お前、見ない顔だな。」
「…あー…」
どうせ本当のことを言ったところで頭が可笑しいと言われるだろう。

「その髪…、街の異端か?いますぐ此処から立ち去れ、すぐに!」

「……サキ?」
「ッ!ユウ、…どうしたの?一人で怖かった?」
剣を手放し、駆け寄る先にいたのは―――、朱夏?
「うん、サキ、いないから怖くて、泣いた」
「大丈夫、泣かないで」
「…朱夏……」

似ている。
目の色や髪の色は違うが、薔薇色の頬に唇。

優しげな目が、こちらを写す。

「……ユウ、家に帰ろう、な?」
「ちょ、待て!」
「サ、キ…、………これは、なに?」

――鈴の音が、辺りに響いた。






脆く崩れさる、体。


地面に、赤と黒が、沈んでゆく。



「…………」
「…お、まえ……なにを…」
「見て、…しまったから。」

今頃気付いた、こいつらは、双子だ。


同じ顔から、一筋の涙が、地面に落ちた。




「一生知らないままなんて、…夢だった。」

まだ温かいだろう死体の唇にキスをした。

優しく、
優しい、
壊れないように。


まるでなにかのワンシーンだ。



「お前、名前は?」
「…名前なんて、ない。」
「…なら、朱夏。お前に我をやろう。」





数えきれない深い闇まで。
狂ったお前にすべてを。


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