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□漁夫の漁夫の利
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「「……」」

公園のベンチに腰掛けた三人の青年は、目の前の白い箱の中身を見て絶句していた。

「…なんで四つなわけ?」

その内の一人、ハヤトが苛立ちを込めて問う。

「すみませんハヤト様、確かに一人一つずつ頼んだはずなのに…」
「レオさんが謝るこたねぇだろ。つかハヤト、口調きつすぎ」

ハヤトを守護する三大神の一、レオが深々と頭を下げる隣でアードがたしなめた。

「増えたなら問題ねぇだろ。俺が食えばいい訳だからな!」
「はぁ?何言ってるの?それは僕がもらうよ。おまえにケーキ二個なんてもったいない」
「…ぁに?やせぎす王子には荷が勝ちすぎるだろ」

仲の悪いハヤトとアード。レオを挟んで視線の先で火花が散る。

「ち、ちょっと、喧嘩はダメですよ!」
「なんだい?レオも欲しいのかい?」
「いえハヤト様、僕はいりませんが…」
「あそ。じゃあ黙っててよ」

言いながら抜刀しかけるハヤトを、レオは無理矢理押さえにかかる。

「ダメです!こんな人気の多い場所で剣抜かないでください!」
「いいじゃねぇかレオさん。ハヤトとの勝負、ここでつけようじゃねぇか」

アードまで刀を抜いた。直後に苛烈に煌めいた、レオの瞳。

「ダ・メ・で・す!!」

掲げられた右手には魔力が集中して紫電が散っていた。『他人に迷惑をかけたくない』。必死なレオの顔は般若に近かった。

「じゃんけんで決めてください。公平でしょう…?」
「…し、しょうがないな」
「ま、まぁ、今日はそれでいいか」

仮にも護衛神。ここで彼の魔力を爆発された方が困るに決まっている。
ニコリと笑って手を下ろすレオ。傍迷惑なのははたしてどちらか…。


「「じゃーんけーん、ほい!」」
「ちっ、あいこか」
「別のを出せ馬鹿庶民」
「お前こそ出せ馬鹿王子」

この葛藤が10分かかり、しかも決着がつかないことなど、この時は誰も思いもしなかった。


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