賜・捧小説T

□黒羽の襲来
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「これは一体…!?」

ユーヴェリオル城に血相を変えて飛び込んできた兵士の報告を受け、城下町に向かったクラウは絶句した。

烏・烏・烏……。

町を埋め尽くそうとでもするように、大量の烏が町に居座っていた。

どこからこれほどの量の烏が出てきたのか…。クラウがそう思っていると、不意に烏が一斉にクラウの方を向いた。

「うわ…!」

普段烏なんて見慣れてるのに、束になるととんでもない威圧感。
恐怖は理性を抑えつけ、体を本能のまま動かす。
無意識に投擲した得物は相手を何羽か仕留めたが、それは火に油を注ぐ行為にほかならなかった。

烏達が一斉に舞い上がる。そして急降下を開始した。

「くっ…!」

横転して矢のような觜をを避ける。
得物を投げ、一陣の軌道を逸らす。
魔法を用い、向かってくる敵を逆に押し戻す。



だが結局は多勢に無勢。次々と攻撃してくる烏達に、段々と押されてくる。目前に爪が伸びてきて、クラウは思わず顔をかばった。





バチッ!





突如、クラウの前に何か壁があるかのように、何かに弾かれて烏が後方に飛ばされた。クラウが恐る恐る顔を上げてみると、目の前には黄金の龍が描かれた大剣が突きたっていた。

「『過ぎ行く光陰の如く!貫け!雷撃招来!』」

頭上で呪文が紡がれた瞬間、空から柱とも見える雷が叩き落ち、烏の大群に大穴を開けた。

「どうだ、ちったぁ効いただろ?」

大剣の側に片膝をついて降り立ったのは、黄金の髪と同色の目が特徴的な男だった。大剣の柄を握り、向こう側にいたクラウに気付く。

「…すまん、落とした」

…どうやら故意に助けた訳ではないらしい。

「あ、いえいえ。おかげで助かりましたs―――!」

ふと耳に響いた羽音。金髪の男の背後から、体勢を整えた烏達が再び向かってきていた。

「また烏が…!僕達も反撃しないと!」
「あぁ…」

返事から覇気がないように感じられる。
男は得物を引き抜き、短剣を抜き構えるクラウの横に立とうとして……崩れ落ちた。

「え、ちょっ、大丈夫ですか!?」

男に外傷は見受けられないが、返事もない。必然・強制的に、クラウはまた一人で戦う必要を迫られた。


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