自転車のペダルを漕ぐ。
ぎーこ、ぎーこ。
「さみー、なんなのこの寒さは」
「うだうだ言わずに漕ぎなよ貴巳ー」
荷台に乗った凌がさも楽しそうに声を上げる。
そんなこと言ったって、寒いことは寒いんだ。
「へーへー。つーかいい加減代われよ疲れた」
「やだよ、おれ今そんな体力ない」
十月。真夏の暑さはすっかり影を潜め、街にもいよいよ本格的な秋が訪れようとしていた。
十月と言えばハロウィン。
そんな訳で俺達の街も、ハロウィン一色に染まりつつあった。
「嘘つけ。お前の方が体力あんだろ」
一瞬だけ肩越しに振り返って睨むと、凌は肩を竦めて微笑む。
今さら凌にかわいこぶられても、俺に通用する筈もなく。
「笑ってねーで、代われ。じゃないと置いてくからな」
俺の冷酷な一言が凌に突き刺さった。