小説
□『桃』 に
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太陽の光でもなく。
鳥の囀りでもなく。
「ぎゃあああああああ!」
甲高い子供の声によって、目を覚ますなどと誰が予想出来ただろうか。
青空よりも深く、海よりも澄んだ青い髪は相変わらずで。
服装もその身体にはきちんと合っている。
けれど、ほんの数センチしかなかった視線の差が十センチ…否、三十センチ近くある。
「……将、臣…?」
早朝だというのに眠気などどこかに吹き飛んでいた。
雅は目の前で起きている光景に頭痛がする。
「みやび…」
普段よりも高い、まだ変声期を迎えていない子供の声。
若干大きな目に、やんちゃさと幼さを見せる顔立ち。
そう、将臣は子供の姿になっていたのだ。
年齢は小学校高学年とまでいかない十歳程度で。
因みに、昨夜同様木に背を預けている知盛も中学生二年生程の姿で今も尚眠っている。
(頭いてぇ……)
夢なら醒めてくれ、と今程願った事はないかもしれない。
そして、今頃笑っているだろう男を恨む。