小説
□『ある冬の日の』
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『ある冬の日の』
目が覚めて、最初に見るものが青になったのは何時からだろうか。
決して深い意味はなく、ふとした時に共に布団を共有する。たまにもう一人増える事もあるが、流石に一組では足らず、その場合のみ、もう一組布団が増えるのだ。
季節の事もあるが、身体を丸め、まるで猫の様に眠る姿に自然と頬が弛んでしまう。
生憎と背中を向けられている為、その寝顔を見る事は叶わない。それに若干の寂しさを覚えるも、起き上がり背伸びをした。
眠っている間に固くなった筋肉が伸ばされる感覚は痛いけれど気持ち良い。
「おはよ、将臣」
癖のある髪を指先でそっと梳く。
まだ起きる気配はなく、だらしなく口を開き、今にも涎が零れ落ちそうだ。
思わず噴出しかけるのを我慢し、立ち上がる。
縁側に出ると冷たい風が温まっていた肌を刺激し、ぶるりと身震いする。
隣の部屋の障子を開けると、こちらも猫のように身体を丸めて眠っているらしい。
どちらかといえば、彼の方が気紛れなので、猫らしさが上回っていた。
「知盛、ほら、起きろー」
猫毛の銀色の髪を梳きながら、声を掛ける。
将臣と違い、彼はすぐに薄っすらと目を開けた。
けれどまだ夢の中に半ばいる様で、紫苑の眼は焦点が合ってない。
普段から眠たそうな顔をし、よく見かけるが。
ここまで寝惚け眼は久方ぶりだろうか。
自然と零れる笑みに、目を細める。
「俺、顔洗ってくるから隣で寝てる将臣起こしてくれないか?」
笑みを浮かべながら知盛の布団を剥ぎ取る。
寒いのか、より一層身体を丸くするその姿を可愛いと思ってしまうのはそろそろ末期だろうか。
こほん、と軽く咳払いをし、もう一度将臣を起こしてもらうよう頼む。
特に自分が起こしても構わないのだが。
効果的な方を選ぶのが利口というものだ。
内心将臣に謝罪を述べつつも、剥ぎ取った布団を畳み、知盛の足元に置く。
「それじゃぁ、頼んだからな」
漸く上半身を起き上がらせた知盛にそういうと、井戸のある方へと足を向かわせる。