小説

□『暑苦しいSandwich』
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『暑苦しいSandwich』




 忘れていた、といえばそうなのかもしれない。
 その点に関しては詫びよう。
 しかし。


「知盛…お前、また将臣にこの酒飲ませたのか……」


 既に半分近く無くなった入れ物を揺らす。
 つい数分前まではたっぷりと入っていた筈なのに、今ではぴちゃりという小さな音しか聞こえない。
 深く溜息をつき、酒を飲み続ける知盛を見た。

 知盛は面白げに目を細め、己の膝に頭を預ける将臣の髪を梳く。
 ぐぅ、と小さな寝息を漏らす将臣の顔は赤い。

 要するに、酔い潰れたのだ。


「前に言ったよなー? 俺」


 酒を飲むのも構わない。
 三人で飲む事だって嬉しいから歓迎しよう。
 だが。


「明日に響くような飲ませ方はするなってさぁ…」


 言ったよな、俺。と首を傾げて訪ねれば、知盛は咽喉を鳴らして笑う。
 知らないと言い張るつもりであろうか。
 何度目になるか分からない溜息をついた。


「クッ…半端に飲んだ有川に困ったのは、お前…だろう……?」
「…………」


 事実な為に言い返せず、ぐっと悔しく思う。

 そう、将臣は軽ければまともだし、飲み過ぎれば潰れる。
 だからといって半端に飲ませれば絡むのだ。
 ただ絡むならば構わないが、その行為が頭を悩ます。


「はあ…将臣はキスが好きなんだって言わんばかりだもんなぁ」


 そうなのだ。
 絡み出した将臣は完全なキス魔となる。
 相手は殆ど、隣にいる知盛なのだが、時折こちらにも来てしまう。
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