小説
□『溺れる〜願い〜』
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その空を見て、何を思う。
遠き過去か、近き未来か。
家族、友人……。
逢いたいと思う者は多い。
けれど。
夜空に浮かぶ満月よ。
数多に輝く幾多の星よ。
叶えよ、望みを。
逢えずとも良い、逢えずとも良いから。
叶えてほしい、この願いを。
失いたくない。
喪いたくない。
両親にも、弟にも、幼馴染にも逢いたいとは思う。
けれどそれ以上に。
あの男を喪う方が嫌だ。
逢いたいと思う。
しかし、それによりあの男を喪うのならば逢いたくない。
喪いたくない。
あの男を…絶対に。
夜空に浮かぶ満月よ。
数多に輝く幾多の星よ。
大切な人に逢わせてくれる力があるのならば。
その力。
大切な人を助ける為に使わせてはくれないだろうか。
それ程にまで。
あの男が、大切…なのだ…―――。
『溺れる 〜願い〜』