小説
□『角砂糖のように甘い』☆☆
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将臣は押し倒されていた。
誰に、などと訊ねるのは笑いを誘うだろうか。
将臣を床に押し付けられる相手など一人しかいない。
銀色の髪を揺らし、紫苑の眼は楽しげに笑う。
「クッ……そんな顔をするな、有川」
「うるせぇ! どけっ!」
手首を掴まれている将臣は両足をばたつかせる。
目を細め、咽喉を鳴らして笑う。
知盛は手首を片方開放し、一度白い指で将臣の頬から顎にかけて触れる。
顎で手を止め、しっかりと固定した後に唇を重ねた。
「―――ぐっ! ッ、んん……!!」
開放された手で知盛の肩を押し返そうとする。
けれど呼吸すら奪われる程に深く――強く――吸われているうちに、その力は弱くなった。
ぎゅっと瞼を閉じ、必死に舌が逃げる。
しかしそれを寧ろ楽しむかのように知盛は歯の裏を舐め、歯茎をなぞる。
「んっ、ふ…んんっ……ぁ、ん!」
肩を押していた腕はがくがく震え、知盛の肩に爪を食い込ませる。
その頃になって漸く、知盛はもう片方の手首も開放した。