他作品
□クーラー使用不能
1ページ/1ページ
部屋のクーラーは壊れてしまったのだろうか。
口から出る息は熱く、身体からは汗が流れた。
彼の首に腕を回し、その肩に額を当てる。お互い汗でしっとりした肌は熱いのに酷く心地良い。
夏でも滅多に汗を流さないイメージの彼が耳元で熱く、荒い息を吐き出す音は耳を擽り。
ベッドのシーツから浮く腰を支え、背中に回された腕にエースは目を細めた。
「マ、ルコ……っ」
はあ、と息を吐き出すと共に名を呼ぶ。
直腸を広げ、体内に収まる熱に痛みは感じず、時折背筋を駆ける震えは快楽故に。
お互いの身体から発する熱気とにおいに酔いそうだ。
マルコが腰を動かす度に骨を通して全身に衝撃は訪れ、空を裂く音が咽喉から発せられる。
は、は、と動きに合わせて呼吸が出来るようになったのは最近になってからで。
それまではエースが咽喉を引き攣かせるとマルコは一度動きを止め、落ち着くのを待っていてくれたものだ。
だが、今はそれも無く、エースは生理的に出てしまう声を抑える事は出来ずにいた。
「ちょ、っ、…ま…ァ…!」
肩に爪を立てて動きを止めようとはするが、出せる力など高が知れている。
寧ろその反応はマルコを喜ばせているようで。彼のくつりと笑う声が聞こえた。
「――ア! ち、……マル、コぉ……っ」
彼の肩に額を擦り付け、背中の肉に爪を食い込ませた。
自然と流れてしまう涙を止める事は出来ず、只管首を横に振る。
ぱさりぱさりと汗で湿った黒い髪はマルコの肌を擽り。
まだ、まだ嫌だ。と訴える姿は実際の年齢よりも幾分幼く彼を見せた。
普段が10歳も離れた自分に追い付こうと何処か大人びた所があるだけに、増してその印象は強く。
一生懸命甘えているその姿を愛おしく思えてしまう自分はきっと、この熱にやられてしまったに違いない。そうマルコは自分を納得させた。
「……エース…」
びくりびくりと快楽に反応する身体。
眉間に皺を寄せてそれを堪えようとするエースの耳元でマルコは名を呼ぶ。
滲み出た涙を乗せ、睫毛を震わせゆっくりエースは目を開く。
つぅ、とその際流れた涙を舌で舐めとろうものならば、エースは吐息混じりにマルコの名を呼んだ。
「―――いい、ぜ…っ」
「………ッ」
途端、まるで花が咲いたかのように、エースはふわりと笑みを浮かべた。
普段見せる悪餓鬼染みた笑みとは違う、嬉しそうなその表情にマルコは息を飲み、エースの頭を抱え込んだ。
先程よりもずっと高く、大きな震えた声をエースは挙げる。
既に言葉にすらなっていないそれはマルコの脳に直接響き、動きが止まると同時にエースの中に感じたもの全てを注ぎ込む。
「ひ、ィ…あ――!」
ビクビク、と背筋を弓のように撓らせ、足先までぴんと伸ばし、エースは大きく震え、マルコより一拍遅れて吐き出す。
はっ、は、と互いに激しく胸を上下させ、ゆっくりエースの中から出ると、エースは名残惜しげに小刻みで震えた。
そしてマルコはエースの閉じられた目蓋に唇を落とす。
へらりと笑うエースに、マルコは目を細め、口端だけで笑みを浮かべた。
.