朝焼けの館

□運命の十字架
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自分がこういう質だと気づいたのは、いつの頃だったろうか。
寄せられる好意にも、上辺だけの笑いで答えて。
異性に対して、いい人だけで終わる。
そんな関係にも慣れきっていた。
下心のある感情や、掛け値ない想いにもさらされすぎた俺の心は、体よく言うなら荒んでいたんだと思う。
だから俺は、自分の世界を求めた。
ピアノにバイオリン、そして───テニス。
誰にも邪魔されない、俺だけの居場所を作ろうと、必死だった。

あの人に、会うまでは。

一目惚れだった。
黒くて長い髪、強い視線。
人に興味を抱かなくなって久しい自分が、こんなに心揺さ振られるなんて。
あれは一体誰なんだ?

「おい、そこの一年。何見てんだよ」
「すっ、すみません!綺麗なもんでつい…」

同学年から、笑いの声があがる。
そりゃそうだろう、男の先輩を綺麗、だなんて。
けど当人は気にした様子もなく、面白いヤツだなと笑っただけだった。

「二年、宍戸亮だ。何でも相談しろよ」

シシドリョウセンパイ。
それが俺に刻まれた、宍戸さんへの初恋だった。
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