朝焼けの館

□愛してるって云わないで
2ページ/10ページ

初めて会ったのは、フェンス越しのコートだった。
「千石」
「あー、柳くん」
見つかった、と思って声に振り向くと、柳くんがこっちを見てた。
柳くんは俺より身長は高いけど、けっこう可愛いタイプだ。
以前声をかけたけど、丁重に断られてしまった。
「何?デートしてくれる気になった?」
「すまないが、俺には弦一郎がいるのでな」
「真田くんねー」
真田くんは柳くんと同じ立海の副部長だ。
皇帝、とあだ名されるだけあって、怖い。
俺の苦手なタイプだ。
その真田くんと柳くんは付き合っているらしい。
しかも、一年の時から。
「一度くらい、いいじゃん?」
「すまないな」
やんわりと断られる。
まぁ、予想の範囲内だからショックも受けないけど。
「あ〜、どっかにかわいい子いないかなぁ」
「そういうお前が、この立海をふらふらしてるのは、どういうわけなんだ?」
「───……」
その鋭さに、時々どきっとするよ。
だから声をかける気になったのかもね、君に。
「偵察がてらに女の子ウォッチングでも、なんちゃって♪」
「懲りないな…」
柳くんがそうため息をついた刹那、ひょっこりと人が現れた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ