朝焼けの館

□キスよりも甘く
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そして迎えた、二月───。

女子生徒が何やら浮き足立っている。
雑誌を覗き込んでは、手作りがいいだのなんだのと…。
ああ、そうかと合点がいった。
バレンタインデーがもうすぐだ。
精市あたりであれば、いくらでも貰っていそうな気がする。
そこまで考えを巡らせて、ふと気付いた。
…弦一郎はどうなのだろう…?
きつい目線と無愛想で、近づく女子はあまりいないが。
男子テニス部の一年レギュラー。
チョコくらい、貰っていてもおかしくはない。
おかしくはない、のだが…。
…なんだ、このもやもやした気持ちは。
男が男に贈ったって気持ち悪いだけだろう、それに自分でも…真田への気持ちがなんだか、よくわかっていないというのに。

チョコレート…か。

妙に引っ掛かるその単語を胸に、弦一郎の好みを探ってしまう自分は、かなり重傷なのかもしれなかった。
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