朝焼けの館

□Liar liar
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「いい、天気だね」
屋上のドアを開け放ち、空を見上げる。
こんな日はコートに立って、容赦ない打ち合いをしていた。
それが簡単にできなくなるなんて、死刑宣告にも等しいよ。
そして今も当たり前のような顔をして、柳の隣に立つ君が、憎らしいよ真田。
そんな事にも気付かないで、残酷な事を聞くんだ君は。
「…どうだ、今日の調子は」
「悪くないよ。ほら、こうやって体も動かせる」
軽く腕を動かすと、真田はほっとしたように息をついた。
「蓮二が、心配をしていた」
「柳が?」
ちくり。
胸に突き刺さる痛み。
「俺ばかりで顔を出すから、不満らしい。…今度、皆で来ていいか」
「うん、構わないよ」
にこり、と笑ってみせる。
真田は知らないだろう、君の口から柳の名前が出る度に、俺が嫉妬で狂いそうになる事。
『蓮二』
その響きが、俺を惑わせる事を。
「柳には、無事だって伝えておいて」
「ああ、わかった」
何事もなかったかのように、受け流す。

柳が愛する、真田。
その唇を、身体を奪ってやったら、柳、君は───どんな顔をして、傷つくんだろうね?

昏い感情が、支配する。
「ねぇ、真田」
「む、なんだ」


『抱いてよ』

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