朝焼けの館

□Liar liar
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「───………」
目に入るのは、白い天井。
薄く開いた窓からの風に、揺れるカーテン。
少し眠っていたようだった。
一年前くらいの、幸せで切ない夢を見ていた。
頭を軽く振って、余韻を払う。
窓の下を覗いても、愛しい人の姿は見えやしない。
ここは病院、白い箱の中。

…柳が好きだと自覚したのは、いつの事だっただろう。
知らぬうちに、この身に巣食った病魔のように、柳と真田はひそやかにこの胸に入ってきた。
一年からのレギュラー、羨望も憎しみも三人で受けとめて、やりすごしてきた。
だけどその中で、柳は特別だった。
どこがどうとか、言葉で言い表される事じゃなくて、俺だけのためにいてほしかった。
そんな子供じみた願いは、一人の男によって砕かれた。
真田、弦一郎…。
真田も口には出さなかったけど、柳に魅かれてる事にはすぐにわかった。
最初は女の子だと間違って不興をかったようだけど、柳も真田に心を開いていくのが手に取るようにわかって…。
悔しかった。
強さでなら柳の中に何かを残せるかと、必死で練習した。
そして得られたはずの勝利は、病気によって淡く消えた。

今はこの小さなベッドの中で、狭い箱の中で、死を待つだけの体だ。
勿論、ただ何もせず死んでいくなんてごめんだ。
必ず治して、またコートに立つ。
皆と一緒に…。
そう力ない指に力をこめた時、病室の扉が開いた。
「幸村くん、お友達よ」

「真田……」
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