朝焼けの館

□アカバナーの恋詩
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―――覚えているのは、卑下た笑いと口の中に走る血の味。


ある朝、比嘉中三年平古場凛は自室で目を覚ました。
口の中がやけに腫れぼったく、体がだるく重い以外はいつもと変わらない朝のはずだった。
ふと、部屋の中にある鏡に目が行く。
さらりと金髪が落ちかかる口元に、赤い痣。
平古場は覚えのないそれに、一瞥だけくれて部屋を出た。


「母さん、わんの朝飯…」
平古場が階下に降りていくと、家族中が怯えるような目つきで彼を振り返った。
名指しされた母はおそるおそる近づいてきて、大丈夫なのと一言問うた。

「ぬーが?」
「だ、大丈夫ならそれでゆたさん」

やけに慌てたような母。
いつもとは違った目で自分を見る祖母。
そして、気にすんじゃないわよと一言囁いていった姉。

何もかもが平古場の知らない世界だった。
まるで一夜のうちに何かが起こったかのように。


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