朝焼けの館

□愛してるって云わないで
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『あなたが好きです』

軽々しくそんな事言っちゃダメだよ。
俺は最低の男だって知ってるだろ?
“一度きり”その約束の言葉で、何度身体を差し出したか。
…君は知らない方がよかった、禁断のソドムの蜜。
まっさらな白さが、俺の闇に染まってく。

『一目ぼれだったんス』
期待させるような事言わないでくれるかな。
目的は身体?目立つこの顔?
それとも、俺を捕まえて飼い殺し?
裏切りを許さない君の期待には添えないよ、俺は簡単に飛び回る。
知ってる筈だろ?

『─────』
ああ、その言葉だけは言わないで。
逃げられなくなる、君から。
キミの腕の中に堕ちていく。
それは背徳か悪魔の甘美か。
もしかして、魅入られたのは俺の方なのかな。
紅の瞳、宿す狂気。
逃げられない?逃げたくない?

『千石さん』
不思議だね、そう君に呼ばれる度に、名の通りに清らかな気さえしてしまう。
君には悪気がないから、質が悪いよ。
まっさらなままで、恋できたらよかったね。
汚れた指先で君に爪立てて、快楽を貪る愚かな雄だから。

だから……


『愛してるって云わないで』
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