朝焼けの館

□Liar liar
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たった一つ手に入れたいもののために、俺はこの目で嘘をつく。


ふわり、ふわり。
眼下で長めの髪が揺れる。
窓際のこの席から、彼を見つめるのがすっかり癖になってしまった。
伏せた双眸、女の子と見間違うようなその容貌。
彼を見る度に、胸を過ぎる切なさと一緒に、わずかな諦めに似た感情が沸き上がる。
何故なら、開いたその瞳に映るのは、俺ではないから……。
嬉しそうな笑顔の先には、あいつがいる。
隠してるつもりなんだろうけど、ずっと見てきた俺にはわかるよ。
ねぇ、柳。
どうして俺じゃダメだったんだい?
どうして、真田なの?

それからしばらくして、春の兆し見える季節に、二人が付き合いだしたと聞いた。
俺の恋は、儚く散った。
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