朝焼けの館

□難攻不落の恋模様。
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「あー、こんな所におった」
声がして起き上がってみれば、近くに端正な美形中の美形が、俺の顔を覗きこんどった。
「ッ…白石」
「屋上で寝とるとはな。小春が探しとったで?」
……小春。
その名前が、妙に心に痛い。
「…探しとったいうたかて、何の用なんやろ」
自嘲気味に吐き捨てると、白石が目を丸くした。
「何や、用がなくたって、いつも一緒におるやないか」
「せやけど…正直つらいもんはつらいねん」
「小春に惚れとるからか?」
「…せや。いいよなお前は、可愛い子がおって」
そう茶化してやると、白石の顔が笑顔になった。
「なんや、知ってたんか」
あんな狭い部室、嫌でも広まるわ!
ましてや部活内男同士、気付かんほうがアホや。
「謙也に手ぇ出したら、怒るでぇ」
「出さんわ!」
くくく、と白石は笑うと、俺の頭を触れるだけ撫でてきた。
「な、なんやねん」
「いつものユウジらしくなってきたやないか。その勢いで当たってみ?小春、ユウジの事、嫌いじゃあらへんで」
「……知っとる」
嫌いではない、でも特別ではない。
そんな関係でいくつも季節は過ぎた。
でももう…そんな関係限界やねん。
「俺は、本気でっ……!」
「……ユウくん」
は、と振り返った先には小春がいた。
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